バディ制チームナーシングリーダーの元、看護実践能力を高めた実例

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バディ制チームナーシング

近年の医療現場は、医療の高度化や専門性、治療の多様化、在院日数の短縮などにより看護職に求められることが拡大しています。それに比例して、看護師個々への負担が大きくなり、余裕のない状況に置かれています。

また、電子カルテの導入などによって情報の共有が容易になった反面、人と人とのかかわりが希薄になっていると感じています。職場の活性化を図るために業務改善に取り組む施設は多いのですが、時として「効率の良い仕事」=「時間の短縮」に重点が置かれ、人との対話の時間はそぎ落とされ、個々に業務をこなしていかなければならない状況を招いてしまうこともあります。

ある病院では、実際に、申し送りの廃止に伴い、チーム内で看護師同士が自分の状況を伝えたり、会話をしたりする機会が減っています。しかし、短い入院期間の中での、専門かつ高度な医療・患者のニーズを尊重した迅速な対応が求められている時代だからこそ、看護師個々の力を結集し、チームで一丸となって質の高い看護を提供していくことが重要だと考えます。

チームナーシングで看護誌同士が一緒に働くということ

スタッフヘ問題提起をして業務改善に取り組みながら、2010年10月より今までの看護体制にバディで働く機能を追加し、チーム体制の強化を図ってきました。

バディとは、チーム内のメンバー看護師が2人、場合によっては3人で一組となることを指します。

バディ制導入から1年が経過したころから、スタッフ個々の成長はもとより、バディ自体の成長にも変化が現れてきました。現在は、重症患者や術後の患者のみの観察だけでなく、すべての患者の検温や観察・処置などをバディで行っています。

さらには、医療安全の取り組みとして、バデイで日勤の終わりにリスクラウンドと称した患者の周囲の安全確認を行うなど、看護活動の幅を広げています。そして、病院全体として、2012年より看護方式検討プロジェクトが立ち上がり、この方式を「バディ制チームナーシング」と銘打ち、全病棟への導入と定着を目指して準備を始め、2013年4月より全病棟へ導入の運びとなりました。

チームナーシング導入後の評価としてのアンケート調査

その結果、当病棟は、新体制を導入したばかりの病棟に比べ「患者にかかわる時間が増えた」「観察に自信が持てた」「看護ケアに自信が持てた」「チーム内のスタッフに支えられていると感じる」「看護実践を高められるチームだと思う」の項目が高い数値を示しています。

この方式を継続することにより、自信を持って仕事ができ、バディ制チームナーシングで質の高い看護を提供できる環境づくりにつながると考えられます。

バディをつくることから

2010年当時、この病院はモジュール型継続受け持ち方式をとっていました。チームではありますが、一人の患者に対して一人の看護師が入院から退院までを受け持つ方式です。治療方針の確認から看護計画立案・実施・評価まで受け持ち看護師が責任を持って行います。

この方式は看護師個人の高い看護実践能力がかなり必要とされ、看護師への負担は大きいと言えます。現在の病棟に異動してきた当時、病床回転率が高く、日勤平均7人前後の予定や緊急の入院患者を受け入れていました。その日に自分が受け持つ担当患者のケア以外に、複数の入院患者の対応をしなくてはならない状態でした。

チームのメンバーも同様で、互いに声をかける余裕すらなく、黙々と仕事をこなし、自分の仕事が終われば帰宅するという状況でした。今までに受け持った経験のない疾患の患者を担当した時、また不測の事態に陥った時、誰が私の担当患者のフォローをしてくれているのか分からず、自己で解決していかなければならない状況に何とも言えない不安を感じました。

インフォーマルグループもなく、スタッフ間の人間関係は良好

ただし、係長の立場で異動した私は、チームの誰に相談し、誰に聞けば解決できるのか判断し、行動できていたため、大きな問題にはなりませんでした。しかし、中途採用者や他病棟から異動してきた経験年数が浅い人にとっては、このことが相当なストレスと孤独感となり、業務に支障を来しかねません。

また、場合によっては担当する看護師によって対応に格差が生じ、患者に不公平感を与えかねない状況であると言えます。自分の職場異動を通して、この事態は継続看護の危機だと改めて感じました。チームとしての仕事環境は前述のような状況でしたが、病棟自体は雰囲気も良く、インフォーマルグループもなく、スタッフ間の人間関係は良好でした。

中堅スタッフ個々の専門性も高く自信を持って仕事をしている姿には好感が持てました。スタッフに恵まれた環境でありながら、個々のままであることがもったいないと感じていました。そこで、病棟の人間関係やスタッフの仕事に対する姿勢を強みととらえ、個人プレーからチームプレーヘと、 1+1=1の状況から1+1==○○へとなるべく「チームで働くということ」を常に意識し、主に日勤の看護業務改善に着手しました。

当時はバディに次の4点が不足していると考え、その問題を解消すべく取り組みを実践してきました。
バディ制チームナーシング使命は何か、何を目指すのか

この病院は、Aチーム・Bチームの2チームで運営しています。今までは、どちらのチームに属しているかのみで、バディとしてどのように活動するのかという発想はありませんでした。そこでまず、同じビジョンで課題に取り組めるように、それぞれのチームにチームリーダーとサブチームリーダーを設け、チーム会を発足しました。

チームリーダーは、バディ内で最も影響力がある

リーダーは、プラスの方向に牽引できる中堅スタッフを選出し、サブチームリーダーには、周りのスタッフの動きが見えるようになり、仕事の楽しさを感じはじめている3年目くらいのスタッフを選出しました。役割を依頼する時には、そのスタッフの良いところをチームに活かし、さらなる成長を期待して選出しているということを本人に伝えました。そして、計5人で“チーム会係”として活動することにしました。

バディ制チームナーシングの具体的な活動

まず係会で「チームで働くということ」に対するビジョンの共有を図った上で、今後どのようにチーム会を開催したらよいのか検討を重ねました。後日A・B両チーム同時にチーム会を開き、各チームに分かれてSWOT分析を行い、自分たちのしたい看護と現実とのギャップをとらえ、バディとしての問題点を導き出し、課題を明確にしました。

そして、AとB両チームが互いに協力し、成長していけるように、両チームともに課題を発表し、互いにエールを送るようにしました。チーム会は年に3回開催しています。年度初めにチームとしての課題を明確にして1年の目標を立て、中間評価で軌道修正をし、年度末に1年の振り返りを行い、来年度の課題を導き出しています。

バディ制導入から約3年が経過

チームで課題について話し合うことで「自分たちが目指す看護とは何か」「チームで働くということ」を意識し、現在もさらに上の目標を立て、それに向かって対策を考えられるようになっています。具体的な場面を紹介しますと、患者の退院指導の際には、チームで対象者に合った指導方法や内容をカンフアレンスで検討し、バディ制チームナーシング全員で統一してかかわれるようにしています。

また、経験の浅いスタッフに対して、退院指導の進め方や対象者との関係づくりの秘策など、実践を通しながら教え、バディ全体で育成していく姿勢へと変化してきています。
看護業務内容の可視化が進む

今まで自分のワークシートを人に見せることはなく、始業から終業まで持ち歩いていました。極端な話ですが、他のメンバーがどのようなワークシートを使用し、どのように仕事を組み立て、どこまで業務が進んでいるのかが分からない状況でした。そこで、個々の仕事内容の可視化を図るために、個々のワークシートを提示することにしました。

ワークシートをチームごとに一つの机に並べ、いつでも誰でも業務を確認し合えるようにしました。それにより、他のメンバーの1日の業務内容や業務の進行状況、検査0治療などのイベントの把握が可能になり、さらにはそれを見て業務の依頼や手伝いがしやすくなりました。次第に互いの良い点を取り入れるようになり、単なる自分のメモ用紙ではなく、他のバディ制チームナーシングメンバーにも分かりやすいように、他人を意識したワークシートに変化してきました。

現在は、自分の担当患者のケアがひと段落した時に、他のバディ制チームナーシングメンバーのワークシートで看護業務を確認し、代わりに処置へ行くなど、自然にフォローし合える体制になっています。さらには、自分のチームにとどまらず、繁忙の差がある場合はもちろんのこと他チームのワークシートで業務を確認し、チームを越えて協力し合うことが自然に行えるようになってきています。

看護スタッフ同士の対話・情報の共有

新人だった頃は、先輩の技術を間近で見ることができ、現場での患者の援助を通して、看護の暗黙知も自然と受け継がれてきたように思います。注射や採血・喀痰吸引などのように、知識はあっても実際にはうまくできないということは多々あります。その都度、現場で実際に先輩の「技」を自分の日で見て学び、まねながら「技」と「コツ」をつかんでいったものでした。

また、「患者の様子が何かおかしい」「何か嫌な予感がする」といった言葉では表せないような「カン」を患者の援助を通して情報を共有し、教えてもらっていました。さらに、互いに看護観を語り、知りあう機会もあり、その結果、この技術は○○さんがうまい、あの先輩はこういうことを大事にしているなど、チームの誰もが知っていました。

しかし、申し送りの短縮、廃止へと向かっている現在、スタッフ同士の対話が減ってきてしまっています。継続看護や技術の向上、そして互いが成長しチームとして力を発揮するためにも、対話は必要不可欠です。そこで、日勤業務においてバディ制の導入を試みました。全身清拭などの日常生活援助から術後の患者や重症患者の観察を一緒に行い、報告・相談し合うようにしました。

組む相手が入院患者を担当したり、検査出しで時間がとられたりする場合、その相手の受け持ち患者のケアのフォローに回ります。援助を通してバディ間でよく会話し、また互いにプラスのフィードバックをしていくように働きかけました。

バディは経験年数の浅い看護師とベテランで組む

ベテラン看護師は今自分が感じていることや技術のコツなどを意識して言葉にし、伝えていくようにしています。最近では、一人のスタッフの工夫が援助を通してチームのスタッフ間で伝えられ、ケアに取り入れられている場面を見ることがあります。

また、カンフアレンスの時間を設け、患者の看護についてチームで対話する機会をつくりました。朝のショートカンフアレンスでその日のケアの方向性を発表し、午後のカンフアレンスでは、一人の患者に焦点を当て、看護方針・看護計画を見直す機会としています。そこでは、当日勤務しているチームのスタッフ全員が発言できるように配慮しています。経験年数に関係なく自分の持っている情報を発表し、チーム内で共有して援助に結びつけられるようにしています。

看護業務の調整役

今まで、チーム内の業務の調整はコーディネーターが行っていました。コーディネーターには、チーム内の患者に対する医師の指示受け、新人やスタッフの指導、入院患者の担当の振り分け、急な検査、処置の介助、フリー看護師への業務の依頼、カンフアレンスの設定、チーム内の業務調整(日勤業務)などの役割がありました。

しかし、医師の指示受けや確認、他部門との連絡調整、検査0処置の準備などで時間がとられてしまい、他の役割を果たせずにいる現状がありました。特に、チーム内の業務調整、カンフアレンスの設定、フリー看護師との業務調整に関しては手薄になっていました。また、日勤メンバーも、チーム内の業務調整やスタッフ指導はコーディネーターに任せており、個々で自分の日勤での担当患者の援助をこなしている状況でした。

そこで、チーム内の業務調整、カンフアレンスの設定やフリー看護師との調整など、日勤業務におけるチーム内の業務を把握し、統制していく役割を新たに設けることにしました。2010年より日勤リーダーを設け、各チームに1人ずつ配置しました。日勤で担当患者を持たないコーディネーターと違い、日勤リーダーはメンバーと共にバディを組み、自分も担当患者を持ちます。

日勤リーダーは、チーム内の患者の把握をしつつ、チーム内の業務調整を行います。また、他のバディの進行状況をとらえて必要時に応援を依頼したり、補佐に回ったりします。時には援助を通してスタッフに指導的なかかわりをすることもあります。日勤リーダー導入後、他のバデイとの連携も取りやすくなり、チーム内で自然と協力体制ができて、時間管理を意識した動きもできるようになってきました。

さらに、フリー看護師への依頼もタイムリーにでき、フォローし合える環境になってきています。日勤リーダーは経験年数3年目以上の看護師が担当しています。日勤リーダーを任せられるようになったスタッフは、経験年数で違いはあるものの、自分のしたい看護を表現したり、チームをまとめる姿勢が見られたり、成長の糧になっています。

また経験年数が3年に満たない看護師は、日勤リーダーになることが次の課題として、個人の目標に掲げられるようになりました。

チームを協働させる

チーム会や日頃の業務を通して、「チームで働くということ」を常に意識し、業務改善を繰り返してきました。スタッフからは、「指導パンフレットをチームで作成しよう」「うちのチームはここが弱いよね」など、チームを意識した発言が聞かれるようになってきています。確実に自分のチームという意識は高まっており、チームの結束も図られてきています。

チーム会でチームの課題を発表し合うことがA・Bチームそれぞれに刺激となり、互いの発展へとつながっています。医療現場の仕事量は流動的で、患者の重症度やその時の看護度によって変化します。片方のチームに業務が重なり多忙極まりない状況であるのに対し、もう片方のチームは業務量も少なく平穏ということも起こり得ます。

時としてチームを意識するあまり、うちのチームの方が忙しい・大変という比較をしがちですが、そこで互いに大変さを強調するのではなく、病棟全体が一つのチームであるととらえ、私たちの使命とは何か、良い看護を提供するためにはどうしたらよいのか考え、支え合う関係を築いていくことが重要です。当病棟では、チーム間の業務調整・チーム間の協力体制を整えるために次の3点について具体的に取り組んで活動しています。

意図的にフォローし合えるように計画する

ショートカンフアレンスは毎朝、カンフアレンスは週に3~4回、午後の15分間と設定して行っています。患者のケアに支障を来さずに集中してカンフアレンスを行うために、A・Bチーム交互に時間をずらしています。そして、Aチームがカンフアレンスを行っている時はBチームが代わりにAチームの看護師コールや患者対応をし、またBチームがカンフアレンスを行っている時はAチームがBチームの対応をすることとしました。

自然と協力し合える環境になることをねらい、意図的にチーム間で業務に協力し合うように業務に組み込みました。その結果、日勤リーダー同士で時間調節を行うようになり、カンフアレンス時のフォロー体制が定着してきました。
日勤の業務スケジュールを作成する

バディが定着してきたことで、自分たちの処置がひと段落した時には同チームの他のバディの進行具合を確認し、自然にフォローに回れるように変化してきました。チーム間で業務量に差が生じている時には、自然にチームを越えて手伝う姿も見られるようになりました。

チーム間の仕事の進行状況が見えるようになると、もっとフォローがしやすいのではないかと考え、カンフアレンスやおむつ交換、陰部洗浄、点滴などの共通する日勤業務の業務スケジュール(表)を作成しました。それに伴い、他チームの仕事の進行具合が見えるようになり、チーム間で声をかけ合い、フォローし合うことが定着してきています。

相手チームを知る

日勤では朝のショートカンファレンスで、他チームのその日の状況(患者数、検査、処置、入院予定など)をコーディネーターが伝え、情報の共有を図っています。日勤は勤務者が多いのでフォローがしやすい環境ですが、夜勤は勤務者が限られており、少ない人数で仕事をこなしていかなければなりません。

夜勤の場合、おむつ交換、体位変換、緊急入院の対応など、チームを越えた協力が必要不可欠です。相手チームに自分のチームの状況を伝え、不穏やせん妄患者、転倒しやすい人などについて情報共有し、全員で事故防止に努める必要があります。これは、互いのチームを知る良い機会となります。

まとめ

チーム間の業務調整・協力体制を確立させるには、まずチームが十分に機能していることが重要であると考えています。「チームで働くこと」を目指して、メンバーー人ひとりがそれぞれの力を発揮してチームの中で役割を担っていくことが、チームづくりの基本であり、チームの活性化につながっていきます。

チームワークに関するアンケートを実施したところ、「チームの雰囲気」に対して「穏やかで環境は良い」と回答したスタッフが8割、「指摘し合える」「間違ったことをした時に注意し合える」という問いに対して「できる」と回答したスタッフは4割でした。この結果は、ややもすればチームの雰囲気を壊さないようにと気を遣い合う仲良し集団になりかねません。私たちは看護サービスを提供する専門の職業集団です。

常に「本来の仕事は何か? 私たちの使命は何なのか?」を考え、時には意見をぶつけ合うことが重要です。そして、自らが問題に気づき、自らが行動できる集団でありたいと思います。

「バディ制チームナーシング」を導入し、約3年が経過しようとしていますが、「チームで働くこと」に重点を置いてきたことで、新たな発見もありました。チームで働くことで、メンバーー人ひとりの能力が分かり、また、バディで動くことでほかのスタッフが患者にどのように接しているのかも知る機会になりました。

人間関係が希薄化してきていると言われる現代ですが、看護の臨床現場においても同様の傾向があります。人との距離の置き方や寄り添い方、大袈裟に言えば、患者とどう接してよいか分からないというスタッフも少なくはありません。しかし、多様化する患者のニーズに答えていくには、コミュニケーション能力は必要不可欠です。

そのような中、バディでの援助はコミュニケーションの技術を見るには絶好の機会となると言えます。「チームで働くこと」で、互いの力を補完し、チームワークが醸成し、ひいては質の高い統一したケアが提供できるのではないかと考えます。

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