看護師のうつの実例に学ぶ緩和対策と予防方法

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る
うつになり悩む看護師

Aさんは九州出身、学校卒業後、大阪で看護師の資格を得て、数か所の公的病院での勤務を経験しました。その後、某M病院で就労中、ボランティア団体での海外医療活動を希望し、2年間南アメリカに行きました。

ボランティアでの医療の活動はAさんにとって、大きな経験を得ることができました。南アメリカでの海外生活を経験したことで福祉に対する思いが、より一層深まり、通信教育にて社会福祉士の資格を得ることができました。

Aさんは、以前よリマザー・テレサ氏を尊敬していました。これらの経験や思いが募り、キリスト教にも入信し、洗礼を受けるまでになりました。そんなさまざまな思いを抱き、福祉関係の仕事がしたいという気持ちが強くなり、M病院を退職しました。

Aさんは、次の職場に京都のS病院を選択しました。S病院は、環境もよく、Aさんの望む福祉に関わることができると思いました。S病院では当初は職場に慣れるまでは自分の望む職場を要望しませんでした。

しかし、数年がたち職場にも慣れた頃、S病院の看護形態、看護内容、看護職としての意識や、看護全般に対する考え方等のさまざまな古いやり方に納得できないと思い始めました。

看護師のうつは職場から始まった

Aさんは、今の看護に対してどうにかしたいという気持ちを上司に伝えました。その結果、勉強会や研修会等を計画実践することで、徐々に職場が変化していきました。しかし看護師仲間全員が、勉強会や研修会等に賛同して喜んでいるとは言えませんでした。

そんな中、上司達はAさんの、リーダー的実践活動を評価し、次期リーダー的管理職の就任依頼をしました。しかし、Aさんは管理職に同意しませんでした。

スタッフとして、まだまだ患者さまと関わって行きたいという思いがあり、管理職就任の依頼を断りました。その結果、Aさんは部署異動命令を受けることとなりました。

「なぜ異動なのか?」納得できないまま部署異動しました。異動した部は外来でした。そんな納得できない部署で、Aさんの体調に変化が生じ始めました。まさしく職場に合わない性格からくる典型的な看護師のうつなのです。

不眠、食欲低下、めまい、頭痛等で内服薬を服用

この状態が約半年くらい持続した結果、「適応障害」という診断を受け、休養を要することになりました。Aさんはこの診断名に納得できず一人で悩みました。

「なぜ?」「なぜ?」という思いで数力月休養後、復職しました。しかし職場の仲間の視線や自分への対応が辛く、悲しい思いを抱きながら、Aさんなりに頑張って仕事をしていました。

一方、そんな状況も限界があり、また半年後に「抑うつ状態」という病名で三度目の休養となってしまいました。その結果Aさんは退職を選択し、姉が住む大阪に引っ越しをして、休養に専念する結果となりました。

大阪に転居後、間もなくAさんから、私に連絡があり、今までの経緯を知りました。私は、今心理カウンセラーの資格を得たことを伝えると、Aさんは、「これから私に友人という仲ではなく、カウンセラーとクライアントという関係で対応してほしい、そして客観的に私をみてほしい」と言いました。

その後は自宅訪問や電話での、カウンセリングをすることになりました。ちなみに私とAさんは20数年前に前述のM病院で同期入職という仲です。

このような事例を通し、Aさんという人がなぜ「うつ」を発症したかをいろいろな見方で述べてみたいと思います。

Aさんは、自分の意思や意見をはっきり述べ、あやふやなことは嫌い、どちらかというと自か黒かという考えの持ち主です。また自分が思ったことは実行していくタイプ。

そんな反面、とても相手のことを思うやさしい人です。マザー・テレサのような生き方をしたいと願っていた人。そしてちょっぴり淋しがりやでもあります。また他人からみると気が強く「一人でもしっかり生きていける」という感じです。

兄弟姉妹から誰よりも頼りにされる人。しっかり者のAさんというイメージです。初対面の人は、Aさんは、少し冷たく感じる人もいるかも知れません。

看護師のうつの第一の要因は、性格

よく言われることですが、性格面ではどうなのか?

Aさんの性格の一つに几帳面で、やや潔癖症的な面があります。曖昧なことは嫌います。S病院での職場で整理整頓がされていないとか、消毒方法が完璧でないとやり直します。

「なんで整理できないの? どうしてこんな方法でしているの」と思いながら自分で整理整頓をし、器具の消毒をやり直します。

上司に対しては、「上司なのに‥‥、上司だったらちゃんと指導すべき」というふうに思うことが強く、もっと勉強して、部下の指導をするべきという言葉がでてきます。

「自分だったらあんなことしない」という思いになります。

Aさんは、相手が誰であれ、思いを伝えます。

しかしその伝える言葉が相手にやや厳しい言葉になるのは、Aさん自身も気づいているようです。「たぶん私が言う時は、ある程度我慢してきたから言葉がきつくなるの」「我慢するとどうしても柔らかくは話せなくなる」とAさんは言いました。

あきらかにストレスを抱えている状態でした。

看護師のメンタルヘルス不調は、以外と多く業務に差し支えるほどになっています。看護師のメンタルヘルスケアへの取り組みは、組織的な対応が必須になります。そのストレス要因などを詳細に紹介しています、ぜひ参考にしてください。

やさしい半面厳しさが相手から敬遠される

では、なぜ、Aさんは、相手に対しての厳しさが出てくるのかを考えてみました。

Aさんは、九州で生まれました。幼少時代に父親が遠方での仕事のため、家を留守番をすることが多かったそうです。母親は身体が弱く、寝たり起きたりの生活で、子どもたちの世話や家事が満足にできない状態でした。

Aさんは、早くから親から離れて、自分一人でも生きていくために、学業も生活も自立しなければならなかった経緯があります。兄姉にも頼らず看護の道を一人頑張って歩んできたことで、必然的に、自分にも相手に対しても厳しくなったのではないかと考えられます。

今まで頑張っていろいろなことを学んできて、Aさんなりの看護に対する看護観や価値観が固まっていることで、許されないことが多くあったのかも知れません。

それゆえに、プライドの高いAさんにはS病院にとどまるという気持ちにならなかったのではないかと思います。

看護師のうつの第二の要因は、捉えかたの偏り

前文と重なることですが、看護師であれば「こうでなければならない」「管理職であれば当然するべき」「患者さまへの対応は○○でなければならない」等の「するべき思考」があり、Aさんの思う価値観から外れる行動や言動に対しては、その思いが少し強いため、相手を批判したり、責めるかたちになってしまいます。

看護管理職であれば当然すべきこと

しかし、管理職全ての人が完璧にできるわけではありません。「人によってはできないこともある」、という捉えかたを少し変え「看護職であれば○○した方がいい」というふうに「○○べき」から「○○方がいい」という捉え方をすると、相手に対して寛容なこころで見ることができ、相手を責めたり、批判することを少し抑えられ、ストレスが緩和され、気持ちも楽になります。

Aさんはこの「するべき思考」の考え方が強いと、頭ではわかっていてもつい「看護師はこうあるべき」「上司はこうあるべき」という思考になっていました。

また、部署異動についての捉え方はどうでしょう。

上司は、部署異動で、Aさんの指導力を発揮してほしかったかも知れません。外来という部署、異動という結果にAさんは、自分の存在価値を否定的に捉えてしまったことにも要因があるかもしれません。

非合理的思い込みとは? 「こうでなければならない」「こうしなければならない」という固定観念が悲しみや怒りのもとになっている可能性があります。その思い込みを取り除くことが大切になります。

人はそれぞれ、いろいろな思いがあります。いつの間にか無意識のうちに、それらのとりこになってしまい、その結果生きにくくなっていることがあります。その自分を縛っている非合理的な思い込みに気づいて、自分の納得する、新しい合理的な思考を身につけることが、楽な生き方ではないでしょうか。

職場復帰後の看護師の思い

S病院で、良かれと思って実践したことが、同僚たちには、反感を抱くことになりました。Aさんは、コミュニケーションが下手な人ではありませんが、反感を持っていたとは思わなかったのです。

最初の休養後、復帰した時に、反感を持っていたことを知ったのです。復帰後の職場の雰囲気がとても「いや」な感覚がありました。

Aさんは、人の気持ちをとても敏感に察する人です。九州から一人で大阪に来ていろいろな人との関わりで、嫌なことも我慢してきました。自分がいやと思うことは、他人にはしたくない、という思いで生きてきたのです。

人の言葉や態度をとても敏感に感じるAさんです。だから三度目の職場の雰囲気に居場所がないと感じとり、看護師を退職をしました。看護師として、復職後の職場の受け入れ環境はとても大事なことです。

看護師のうつの第四の要因は、体調不良(不眠)

人事異動後、不眠、めまい、食欲不振、頭痛、イライラ感、意欲低下等の体調不良が生じたことで、勤務に支障をきたしました。この体調不良症状は「うつ」症状の特徴に当てはまるかと思います。

初期の不眠症状の出始めが大事です。いろいろな症状の中でも、不眠に焦点をあててみました。不眠が続くと人は思考力や判断力が低下し、仕事のミスにつながります。

睡眠不足が続くと究極、生命に危機的状況をもたらすことは、動物実験でも確かめられています。また、睡眠不足は、身体機能と同様に精神機能に対しても重大な影響を及ぼすことが知られています。

その結果、作業能率の低下、注意力や記憶力の低下が生じます。そして気分は沈みがちになり、対人関係に対して過敏になります。

Aさんは看護師ということもあり、自己判断で「疲れが溜っているだけ」とそのまま頑張りました。頑張ったことで、めまいや頭痛などの症状の二次症状が生じました。

さすがにこれではいけないと思い、医師に相談し、血液検査、レントゲン検査等行い、検査は異常がなかったため、対処療法的な内服薬を処方されました。しかし、症状は軽減しませんでした。

薬での効果がなかったことで、Aさんはお酒の力で睡眠を促しました。お酒は睡眠の導入には効果がありますが、睡眠後半では逆に浅くし、利尿作用もあることから、中途覚醒・早朝覚醒の原因となり、かえって睡眠障害を引き起こします。

また、アルコールは、耐性となり、同じ量では入眠できなくなるため、次第にアルコール量が増加し長期化することで、肝障害、アルコール依存症などの危険性があります。

体調不良への日常の対策

  1. 眠くなってから床に就く。就床時間にこだわらないこと。眠ろうと頑張ることがかえって覚醒状態にさせ、寝付きを悪くしてしまいます。
  2. 同じ時間に起きること。早寝早起きではなく、早起きが早寝に通じるからです。また日曜や休日に遅くまで床で過ごすことは、翌日の朝がつらくなるからです。
  3. 太陽の光を利用してよい睡眠をとること。目が覚めたら日光を取り入れ、体内時計のスイッチをオ
    ンにします。夜は明るすぎない照明での就寝がよい眠りにつながります。
  4. 寝る前には刺激物をさけ、自分なりのリラックス法をとる。就寝4時間前のカフェイン類、パソコンや就寝前1時間前のタバコは避けること。1時間前の音楽・ぬるめの入浴・香り(アロマ)。筋弛緩トレーニングなど自分に合った方法でリラックスをする。
  5. 昼寝は午後3時までに30分以内でする。長い昼寝はかえってぼんやりのもとになります。また夕方以降のうたたねも夜の睡眠に悪影響になります。
  6. 睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと。中途覚醒の原因となります。
  7. 睡眠薬は医師の指示で正しく服薬すること。安易に市販薬を使用せず、医師の診察を受け、一定時間に服用しましょう。アルコールと併用はしないことが大事です。

これらのことを自分なりの方法で対処してみてください。

Aさんの初期症状が出始めたのは、人事異動後、間もないころです。その後頭痛やめまいなどの症状が出ています。Aさんにとって異動という納得のいかない対応にとても辛い思いをしました。

これらの症状をAさんはどのように捉えていたのかというと、「人事異動で少し疲れが溜っているんだ」と判断しました。そして数力月様子をみましたが、症状は軽快しなかったことから、医師の診察を受けた結果、「抑うつ状態」という診断になりました。

Aさんがカウンセリングが始まったのは、「変な臭いがするの、一度来て確かめてほしい」という電話内容がきっかけで、Aさん宅に訪間することになりました。

訪問した時は、AさんがS病院を退職したことも、「うつ」で休養中であることも初めて知りました。

Aさんは今、「臭い」に対して苦しんでいることが分かりました。そんな状態で、何度か訪問することで、今までの状況を知ることになりました。訪問した際は、時間をかけて聴きました。訪間する以外は、電話やメールのやり取りという形のカウンセリングをしてきました。

M病院から京都のS病院に行った経緯や、Aさんの幼少時代などの話が主になっていました。カウンセリングと言っても、Aさんの今の気持ちや、思いを聴くということがほとんどです。

Aさんの育った九州のことももちろん伺いました。

また「こんなことをしたい」とか「このようにしたいけれど」というアドバイスの要求の時は、Aさんの今の状態を知り、Aさんのやりやすい行動ができる方向性を示したり、「こんな事を言われたの、私は納得できないの?どう思う?」という内容の場合は、私なりの意見や感想を言ったりします。

その場合は、必ず確認することがあります。「Aさんはどう思う?」「その時にどんなことが頭に浮かぶの?」という捉え方を聴くようにしています。

それは、Aさんの価値観や思考を知り、捉え方を変えることで、相手に対しての怒りを少なくすることができるからです。このように毎回根気強く話をすることが大切だと考えます。

まとめ

「うつ」は、看護師にかぎらず一進一退の繰り返しです。人によって浮き沈みの差があります。

看護師のAさんも、浮き沈みがあり、どちらかというと沈みの期間の方が長いタイプでした。私はAさんとの、カウンセリングを通して、私自身の価値観や思考的な傾向の反省をすることもあり、またカウンセラーとして勉強になることも多々ありました。

※この記事を読まれた方は、ぜひ下記の記事も合わせて読んでみてください。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。