看護師の受け入れに対するサポート

新しい中途採用看護師が受け入れ側と共通の看護の文化をつくった

中途採用看護師に対して具体的にどのような指導をすればよいのかについては、看護管理者や教育担当者、受け入れ側の看護師がお互いに指導内容を共有することが大切です。

指導の基本となる部分を共有する機会がなければ、それぞれが指導・教育的だと考える行動にばらつきが出て、場合によってまったく正反対の対応をすることさえあります。

看護師の受け入れのビジョンに基づく具体的行動に理解と協力を得る

教育目的や教育目標が明示されることによって、 自分たちの施設はどんな看護師を育てたいのか、どのような看護師を必要としているのかという、人材育成の目ざす方向が明らかになります。それがビジョンなのです。

多くの施設では、看護部門の教育目的に「安全な看護の提供」、「科学的根拠に基づいた看護を提供する」などが掲げられています。しかし、安全な看護の提供とは実際にはどのような看護のことなのか、具体的な中身が示されなければ、現場での判断の基準や行動のよりどころは得られません。

「ベッドサイドの安全を徹底する:その状況は患者にとって安全か。ベッドサイドを離れるときに最低3回、自分自身に問いかけよう」など、看護師がどのように動けばよいのか、具体的なイメージがつくものが現場での実l:麦には求められるのです。ビジョンと共に、ビジョンと連動した具体的な行動の両方が示されることが重要になります。

中途採用看護師を受け入れた病院

教育目的の目標の具体的明示

中途採用看護師の教育に際しても同じです。教育担当者や看護管理者から、明確で具体的な行動が示されていれば、指導の際にどのようにかかわるか迷ったとき、困ったときに、それを参考に次の対策を立てることが容易になります。

看護管理者や教育担当者の具体的な指示・命令が常にビジョンを反映していれば、受け入れ側の看護師のあらゆる行動も当然ビジョンを反映し、1つの方向に向かったものとなるはずです。たとえ忙しく余裕のない状況や、看護管理者が不在の時間帯においても、中途採用看護師への対応をビジョンにそった方向に徹底させる力をもつのです。

それを実現するには、複雑で実行が難しい実践を期待するのではなく、具体的でシンプルな内容を繰り返すように指導することが有効になります。明確で実践しやすい具体的なことから、あきらめずに行動を継続することが結局は大きな力を発揮するのです。中途採用看護師の教育をサポートする、記事には「教育」をどのようにコントロールして中途採用看護師のチカラを発揮させるのか?を具体的な現場の手法を書いていますので、興味のある方は是非およみください。

そのためには、看護管理者や教育担当者が受け入れ側の看護師の適切な実践を見逃さず、「あなたのその行動がよかったです」、「さすがですね」と、受け入れ側の看護師たちの行動をポジティブフィードバックで承認し、強化するかかわりが欠かせません。

受け入れ側の看護師の心にビジョンを響かせ浸透させる

看護部や部署単位の理念や教育目的が掲げられていたとしても、呆たしてそれが、どこまで受け入れ側の看護師の心に響き、共通認識として浸透しているでしょうか。

笑顔で中途採用看護師を受け入れる中堅看護し

理念や目的は、施設の年間教育計画の最初に書かれていたり、ホームページに目だつように掲載されていたりしても、受け入れ側の看護師の1人ひとりがじっくりとビジョンの意味や背景について考える機会はそうありません。

また、看護管理者や教育担当者からは「入職時のオリエンテーションでも施設パンフレットでも理念を示しているのに、 日常業務では流されてしまって意識した行動になっていない」という声も聞かれます。人はどれだけ大事だと実感していることでも、時間が経てば忘れてしまう存在です。

ましてや、目まぐるしい臨床現場で看護ケアを提供しながら、新しい仲間の教育にあたる受け入れ側の看護師にとっては、細かくビジョンを確認することは簡単なことではありません。

看護管理者は、受け入れ側の看護師の意識が低いと責める前に、ビジョンを浸透させるために自らがどれだけのことを実施したのかを見直し、その結果として受け入れ側の看護師の考え方や態度を評価することが必要です。

場合によっては、看護管理者のアプローチが受け入れ側の看護師たちの心に響かない方策であったと反省して、謙虚にほかの方法を検討する必要もあります。

看護管理者がビジョンを自分の言葉で説く、施設内ニュースで取り上げる、標語にしてナースステーションに掲示する、カンファレンスで関連するテーマを議論するなど、受け入れ側の看護師の共通認識を育てるには、さまざまに工夫をしてビジョンを浸透させる具体的な行動が必要です。

サポートの方法は受け入れ側の看護師全員で決める

受け入れ側の看護師に主体的に考え、行動してはしいと願っている看護管理者は多いのではないでしょうか。ミーティングで「みなさんが決めることに意味があるの。さあ、がんばって考えて」と言い残し、看護師たちを置き去りにしたことはありませんか。

自己紹介する中途採用看護師出典:毎日新聞

看護管理者が中途採用看護師育成に関する方向性をていねいに解説し、受け入れ側の看護師の理解が得られたとしても、その先どのように行動すべきかがイメージできないと看護師たちは現場で動くことができません。

看護管理者や教育担当者は、受け入れ側の看護師がどのように振る舞えばよいかをイメージできるようになるまで、サポートすることが重要です。「自律して考え、行動しなさい」と言い残したきり放置しているようでは、期待する結果は決して得られないと覚悟してください。

たとえば、来年度の中途採用看護師へのサポートをどうするかを、受け入れ側の看護師に自分の言葉で表現してもらいましょう。「1年間は中途採用看護師を1人も辞めない部署にしたい」、「中途採用看護師のこれまでの経験と力を借りて、業務改善を1つ以上する」など、普段使っている平易な言葉でよいのです。

受け入れ側の看護師全員が意見を交わす場をつくりお互いの考えを知り、その違いや共通点を理解できるまで、十分議論させることが重要です。最後は看護管理者ではなく、受け入れ側の看護師全員が納得して自ら意思決定することが大切です。そうすることによって、中途採用看護師の教育に参画している意識が芽生え、1人ひとりの主体的な行動につながるのです。

中堅看護師の影響力で新しい組織づくりをする

看護管理者や教育担当者が中途採用看護師をサポートする態度をどれだけ示していても、 日勤や夜勤を組む受け入れ側の看護師の不適切な態度によって、中途採用看護師があっさりと離職してしまうということもしばしば耳にします。

このような場合、看護管理者や教育担当者は、「中途採用看護師に厳しい対応ばかりするあの人は、 どうして行動を改めてくれないのだろう」と残念に思うと同時に、望ましい行動をとらない個人を責めがちです。しかし、個人を責めても何も解決しません。

それどころか、対応が厳しいと非難するだけでは、指摘された看護師に「私の気持ちを理解してくれない」という不満を抱かせ、指示の拒否や看護管理者や教育担当者への不信感につながることになってしまいます。

組織文化を中途採用看護師になじませる

では、どのようにすれば受け入れ側の看護師全員に「望ましい態度」を実践させることができるのでしようか。

どんな組織にもそれぞれに個別の特徴があります。それは「組織文化」と呼ばれ、組織の方針や目標、ルールや手続きなどについて共有された知覚だと一般的に定義されています。この組織文化は、その組織で活動するさまざまな人々に大きな影響を及ぼします。とくに、経験年数が浅い人ほど、その部門の組織文化の影響を大きく受けていることが指摘されています。

逆にいえば、中堅からベテラン層はビジョンに影響を受けにくいということです。その中堅からベテラン層に、組織の目ざす方向性を十分に理解し共感して行動してもらうことができれば、中堅看護師たちはロールモデルとして非常に大きな力を発揮してくれることになります。

つまり、実際の現場でリーダーシツプを発揮している看護師たちの力を借りて、人材育成のビジョンを中途採用看護師への「望ましい態度」という具体的行動として示してもらうことにより、看護師全員に浸透させることが可能になります。

看護管理者や教育担当者が、望ましい介入方法をさまざまな形で受け入れ側の看護師に説明しても、上からの押しつけや強制として受け取られてしまっては、不要な反発を招いてしまう場合もあります。そうであれば、なおさら看護管理者や教育担当者が前面に出ず、役者を交代させましょう

豊かな臨床経験

圧倒的な業務遂行能力をもち、常に余裕がある中堅看護師は、部署全体に強い影響力があり、すべての看護師が常に意識するほど存在感をもっています。

中堅看護師は指導においても、自らが抱え込むのでなく、現場のコーデイネートを円滑に行い、指導を展開する高い業務遂行能力をすでに身につけています。

また、受け入れ側の看護師のなかに、中途採用看護師やその指導に対する不満や疑問、否定的な意見をもつ人がいた場合でも、共に同じ苦労をしてきている中堅・ベテラン看護師には、率直な意見を言いやすいということもあります。

中堅看護師は看護師の誰もが認めるロールモデルを示す力をもっている

たとえ理不尽な意見であったとしても、「うんうん。そうよね。そういう気持ちわかるわよ」と、高い共感性をもつことができるのも、共に働いている中堅看護師だからこその能力です。

実力のある中堅看護師は、多忙な現場でも、看護師の誰もが認めるロールモデルを示す圧倒的な力をもっています。現場での非公式なリーダーとしての中堅看護師の能力をしっかりと活用することが、部署にこれまでと違った新しい人材育成の文化を定着させる大きなポイントになるはずです。

看護管理者や教育担当者が行動で自らの態度を示す

コーチングの研修を受講しているときは、 とても楽しく実践的だと思ったのに、いざ部下に接するときに「I(アイ)メッセージ……」と頭で考えてもなかなか言葉として出てこないことがありませんか。また、本に書いてあるとおりに、「すごくよかったよ」とほめても、相手はきょとんとしていて反応がにぶいときがありませんか。

概念としての理論や具体的なフレーズだけを情報としてもっていても、状況や対象に応じたやり方で活用しなければ、期待した結果は得られず無意味なものになってしまいます。とくに経験の浅い看護師であれば、たとえば「ポジティブフイードバック」という行動だけを教えても、それを具体的にどのように相手に対する態度として示すのか、行動化することは簡単ではありません。

受け入れ側がポジテイブフイードバックを実感してもらう

このような場合、看護管理者や教育担当者が実際に行動として示すことが重要です。受け入れ側の看護師が「ああ、私はこの部署で看護をしていてよかった」、「私はここに必要な存在なのだ」、「私でなければ、この役割はできない」などと実感し、自己肯定できるようなポジテイブフイードバックを実感してもらうのです。

どのタイミングで声をかけてもらうと、人はうれしくなってやる気が出るのか、 どのように声をかけると相手が助けを求めやすいのかなど、人はたくさんの経験から学んでいます。まず、「こんな風に声をかけてもらったら、すごくうれしかったから、自分も今度やってみよう」というところからスタートさせるのです。

その経験知を引き出し、実際の指導場合において、「その問いかけはすごくいいですね」など、 しっかリフイードバックして行動を強化するのも看護管理者や教育担当者の役割です。

まとめ

臨床での教育においては、基礎教育のように「自分で考えなさい」、「応用することが大切」と、「自分で考え探し出す」ことにとらわれなくてもよいのではないでしょうか。

それに固執するよりも、「望ましい行動のモデルを見せて教える」ことで、行動に対するポジテイブフイードバツクを体験させることが、有効な指導の1つなのです。

※この記事を読まれた方は、ぜひ下記の記事も合わせて読んでみてください。

SNSでもご購読できます。