起業ナース取り組みの1番目は経営を学ぶ場が 必然的に必要

訪問看護の経営を学ぶ

最近、新たに立ち上がるステーション(以下、S丁)が増えてきたので、経営母体がどのような法人種別になつているのかを、全国訪問事業協会推進委員会部会で調べてみました。すると、2013年の時点で営利法人が一番多くて全体の3割強、さらにその半数は看護師が設立していました。

起業ナースの会が生まれた経緯

この割合は年々増加していて、相当な数を看護師自らが経営していることが数字のなかから見えてきました。ただ廃止するステーションも多くて、経営がうまくいってるのか、いっていないのかという実態についてはわかりません。おもしろい取り組みをしているのは、比較的看護師が立ち上げたSTが多いのですが、それはごく―部の経営がうまくいっているところかもしれないという印象もありました。

経営が二極化している

廃止するところと、うまくいっているところ、経営が二極化している気がして、全体のポトムが上がるような仕掛けをつくれないかと思いました。介護保険の制度ができて15年、訪問看護制度ができて約20年。20年間経営を継続できているところが、まだ数としては少ないですが、これからステーションの大きな支出として職員への退職金の支払いが発生することになります。

長く働ける優良企業というのは、日先の利益を上げられるだけでなく、未来のビジョンもきっちりあって始めて優良と言えるのだと思います。訪問看護業界全体がそうなればイメージも上がり、若い人たちにも働いてもらいやすくなるかなと思います。

月々の給料の保証だけでなく、休みも取れるし退職金もあるよという仕組みをしつかり作りたい。でも仕組みをつくるには、経営の勉強をしないといけない、そんな場を自分も欲していましたので、皆さんの知恵を出し合える場があればと、2014年の3月に「起業ナースの会」を立ち上げました。

2000年に介護保険がスタートし、私たち看護職が法人を設立し訪問看護ステーションを開設することが出来るようになりました。超高齢社会の到来が日本社会の最大の課題と言われ、地域包括ケアの構築、在宅医療の推進等が求められている中、地域医療において中核的役割を担う訪問看護師への期待はますます高まっています。

起業ナースの会とは
参考画像:起業ナースの会

まずは決算書の読み方の勉強、良い看護ができる、良い会社に発展させるためにS丁を立ち上げるのは、比較的、簡単です。本当はその後の「責任を持って続ける」ことが大事なのです。

立ち上げた後には社会に対する責任がある、ということを広めていきたいなと思います。私もそうですが、これまでの先駆者たちは良い看護を提供したいという思いだけで必死にやってきました。ただ、これからの10年は、それだけでは通じないのではと思っています。

会としてはまだ発足したばかりですが、具体的な活動として第1回目の勉強会が終わりました。監査法人の講師を呼んで財務諸表や決算書の読み方の講義を受け、グループに分かれてディスカッションをしました。会で共有したい内容としては、お金の流れのことだけでなく、会社を発展させていくために必要な自分たちの強みなどを明確にすることです。

起業ナース同士で手を取り合い、知恵を出していけたらと思っています。現在の会員数は北海道から沖縄まで26人です。全国のさまざまな考え方をもつナース経営者が集まる場です。どの経営者も良い看護を提供して、良い看護職員を採用して、良い会社に発展させたいという望みは同じだと思うので、発展させていくためのツールを開発できたらいいなと思っています。

なぜ経営がうまくいかないのか

多角的な視点で見る目を養う地域のステーションから「赤字でうまくいきません」と、よくご相談をいただきます。

決算書を見せてもらうと、管理者が月の売上数字をまったく把握していません。すべて「経理や税理士に任せています」と答えるのです。管理者がそんな状態では、どこに無駄があるのか、次にいくら借りられるのかさえわかりません。レセプトの単純な仕組みはわかっていても、帳簿の仕組みが全然理解できていなかったりするのです。

何が問題なのか見極める

いま会社に現金がいくら、借入がいくらと聞いても答えられなくて、ただただ困っている。件数で見れば、常勤は4人いるので月に320件は回れて資金繰り的にも問題ないはずのところが、実際は入院やショートステイの利用などで利用者が減っているのに新規の営業活動をしていない。こんな状態では、賃金が払えないから辞めたいという結果になります。

本当にもったいないですよね。経営がうまくいかない理由は、看護の質かお金の回し方かPR方法か、何が問題なのかを分けて考えなければいけない。それが整理されないと、解決策を見出せなくなってしまいます。

私も最初の頃は資金が回せず、ボーナスが払えなくなりそうで、ストレスで吐血したことがあります。自分も経験があるからわかるのですが、黒字のはずなのに赤字に陥っているのは、支出の読みが甘いためです。お金が入るのは2カ月後なのに、会社として支払わなければいけない支出がわかっていないのです。

人件費は月々の給料だけでなく、職員の社会保険料などをどのタイミングで支払うのか、税金だけみても市民税、県民税、事業税といくつも支払います。そんな基本的なところでつまずいていたりするのです。

看護の質が高ければ、経営は成り立つのか?

若い人に安心して働いてもらえる訪問看護業界を目指す合私たち看護師はある意味、技術職で世界が狭く、世の中の他の仕事を知っているようで知りません。ただ年を重ねるうちに、その狭い知識だけで経営者と名乗ってはいけないような気がしてきました。

学びの大切さは訪問看護では重要

一方で、看護師が経営を学ぶ機会はまったくありません。看護学校では、患者さんのために尽くしなさいとしか教わりませんし、看護の質を高めることには非常に熱心です。ただ、質が高ければお金がついてくるかというと、そう単純な話ではありません。立地の問題や人員など複合的な問題もありますし、熱い思いだけでスタッフに「頑張って働いてくれ」と言うだけでなく、できれば、その思いが収益という形になって現れる方がいいと思います。

看護の質を高めようと思つたら、さまざまな研修会や場があります。ただ、経営に関してはそういう場が少なく、専門家に教えを乞うにもお金がかかります。自分で起業しているナースだからこそ、お互いにわかる気持ちや苦労があります。せっかく看護師が自分の看護をより具現化したいと思って立ち上げたものなら、社会貢献して、それに見合う報酬が職員に対しても、自分に対しても支払われて然り、という風に考えたいですよね。

管理者が自分の給料を切り詰めて職員に払う、というのでは続かないと思うのです。私の知識や経験が生かせることは教え、逆に私が知らないことは教えていただきたい、知識を看護師同士で出し合いたいのです。足りない知識をお互いに支えながら、目指すステーションにしていけたらと思っています。

実際、私自身が立ち上げてすぐのとき、自分がスタッフに支払いたいと思う給料の金額と、稼げる金額には少し差がありました。新卒でもベテランでも、診療報酬体系の中では報酬額が同じになります。ベテランばかり集めても、新卒だけでも経営を成り立たせるのが難しくなります。病院ならば、新卒も中堅もベテランもいて、ベテランは新卒を教育する代わりに若い人は労働時間などで頑張る、という役割分担ができると思うのですが、小規模でスタツフが4~5人のところで報酬を分け合うとなると、私個人の知恵だけでは答えを見つけられないというのが正直な気持ちです。

経営が安定してきて、では、いざ規模の拡大をという次のステップが見えたとき、看護師が病院の中だけで得た知識だけでは乗り越えられないと思います。今、学生が実習に来てくれて、「とても楽しかつた」と言ってはくれるのですが、それが就職につながりません。おそらく将来性や不安があるのではと思います。

規模が小さくても十分稼いでいて、将来性があって、実際に長く働いていけることが数字で示せれば、不安はなくなると思います。

看護職としてもっと夢を語ろう

こんなおもしろい仕事は、若い世代に引き継がないともったいない。きっと今、訪問看護ステーションは、働く規模のイメージでいうと町工場的な感じですよね。別に町工場でいいのですが、「経営がうまくいかなかったら閉鎖」では利用者への責任という意味で良いわけはありません。

私が自分のやりたい仕事の長期計画を立てたとき、その仕事は10年では完成しないので、できれば看護師である息子に、その思いを継承してほしいと思いました。ただ、客観的に親の日から見ると、看護大学に行って大学院まで出て、訪問看護ステーションに就職して仕事は楽しいみたいだけど、男性なら家庭を持つのは厳しいかなとなると不安ですよね。

訪問看護STの条件って何

自分の子どもが就職したいと思えるST、親が推薦したくなるような訪問看護STの条件って何だろうと真剣に考えたのです。もちろん、看護ヘの志が高いとか、手技的に高いスキルを持つているのは当然です。その当たり前はクリアしていて、その先の将来を描けるSTがいいなと思ったのです。

後継者という話でいえば、営利法人として譲るといっても、看護の技術的に優れている部分を譲るということと、経営者として譲るのは全く別ものですよね。これからSTの継承ということを、みんなで考えていかなければならない時代が来ると思っています。大手のフランチャイズばかりが大きくなって、勢いをつけることには首をかしげます。

私たちが事業者として生き残っていくためには利用者の獲得だけではなく、経営的なノウハウも土台の―つに必要だと思います。同じ看護を提供しているのに、片方は成功、片方は廃止というのは絶対おかしいのです。どこが違うのかを、経営分析しなければいけないと思っています。

人に喜ばれることが好きな方たちが、夢をもって起業しているのが今です。そんな経営者たちが集まったとき、儲かって良かつたことや楽しかったこと、もっと夢をみんなで語り合いたいのです。滅私奉公みたいな雰囲気が、時代にそぐわなくなってきているのも現実で、あまりに理念が大きくて大変過ぎると、自分の代で終わりですと言わざるを得なくなることもあると思います。

まとめ

私は経営者として、夢をもって始めた訪問看護師という、こんな楽しい仕事を、次の人に分けてあげなきやもったいないと思います。大変だけどやりがいがあって、利益も出ていて還元できる、そんな継続性のある仕事にしていきたいのです。そうでなければ、仕事としてつまらないですよね。

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