行政保健師の仕事と保健活動

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行政保健師は、「学校保健安全法」という法律のもとに仕事に従事します

1972年に国が策定した「難病対策要綱」では、難病を
①原因不明、治療法未確立であり、かつ、後遺症を残す恐れが少なくない疾病
②経過が慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず介護などに著しく人手を要するために家族の負担が重く、また精神的負担の大きい疾病と定めています。

行政保健師の難病といわれる病気への支援活動を難病患者の状況から解説しています。

難病患者を取り巻く状況

現在、130疾患が難病として事業や研究の対象であり、そのうち56疾患は、医療費の自己負担分に国や都道府県より補助が出ます。また、2013年4月より施行された障害者総合支援法における「障害者」の範囲に難病が加わり、難病患者が地域で生活していくために状況に応じた福祉サービスが受けられるようになりました。

難病の症状はさまざまで診断がむずかしいため、医療機関の選択に戸惑ったり、地域によっては専門家がいなかったり、診断が確定するまで時間がかかるなどの問題があります。

難病相談、支援センター~在宅難病患者を支える事業

難病相談、支援センター~在宅難病患者を支える事業

難病相談・支援センターは全都道府県に配置されており、全国難病研究会が組織され、研究会を行なつています。相談内容は就労、療養、医療と広範囲であり、未だ診断確定されていない人の相談もあります。保健所保健師との連携により、より広く、地域で暮らす療養者の二一ズに対応できる事業として期待されています。


行政保健師の活動は、難病という病気と病気にともなう生活上の障害をもつ人や家族への支援が中心となります。難病患者は、その病気の特徴から、自分がやりたい勉強や仕事をあきらめたり、言葉のもつれや足のふらつきなど障害の程度が進行することで仕事を辞めたり、介護をする家族1人ひとりの生活も変化したりと多くの問題が生じます。

これらの問題をふまえ、本人が病気や障害を受け止め、かつ自分らしく日常生活が送れるように援助、家族への援助を考慮しながら、面接や電話、家庭訪間による相談、在宅療養支援計画の策定や評価などを行ないます。

身体的・精神的・社会的な問題が生じるなかで、患者本人や家族の生活の質をどのように確保していくかが課題となり、医療・福祉の分野と協働して多方面からの支援も必要です。さらに、難病という病気をもちながら、生活していく(生きていく)対象者や家族の生きる目的(自己実現)にまで関わる機会も多いです。

進行性であるために、身体的な自立は困難かもしれませんが、健康である部分に着目してその人らしい生活を支援していくためには、専門的でより高度な保健指導が不可欠です。

行政保健師の1日の仕事の流れ

朝のミーティング

ここでは、ある保健センターで働く保健師の1日を紹介します。

朝は8時半からの「ミーティング」ではじまります。所長や課長から保健センターのその日の予定など全体の話のあと、係ごとに分かれて申し送りや各自の1日のスケジュールを連絡、確認し合います。

1日の業務のパターン

毎日の仕事は、自分が担当する地区の仕事と保健センターの事業の仕事を組み合わせながら行ないます。たとえば、午前中は担当地区の家庭訪間に行き、午後は母子保健事業の担当として発達健診の中心的役割を担うのです。

また、乳児健診の担当でもあるので、合間をぬって、前日の健診の結果表の確認や事後フォローが日課です。

午前は担当地区の仕事:家庭訪間

「家庭訪問」は、新生児訪問や精神疾患を抱えている人、高齢者の人など、対象も目的も多様です。

母親の不安を聞く育児のサポートはもちろんですが、地区の担当者として定期的に顔を出して覚えてもらうことも大切な仕事です。自転車に乗って移動するため、少し遠回りをして担当地区の様子を見回ることもしばしばです。訪問後は毎回上司に報告し、訪問記録をまとめます。

午後は業務分担の仕事:発達健診

午後は「発達健診」という保健センターの事業があり、会場設営や関係者との打ち合わせを入念に行ないます。関係者とは、小児科医1名、PT(理学療法士)1名、ST(言語療法士)1名、健診の手伝いをしてくれるボランティア数名、そして保健師4~ 5名です。

10組の親子の健診が終わると、再び関係者で振り返りのミーティングを行ないます。子どもや保護者の反応を話し合い、今後のサポートに向けて相談します。30分から1時間程度かかることもあります。

不在時の電話相談対応

ミーティングが終わると、事業報告の入力、個別ケースについての記録、地区担当保健師への申し送り、関係者への謝金の手続きをします。

半日不在にするだけで、多いときは10件程度の相談や問い合わせがあります。記録も書きたいのですが、電話が次々とかかってきて相談が続きます。決められた終業時間に帰ることはできない日もあります。

行政保健師の1日の流れの例

時刻 保健師の動き
8時 8:10 出勤、掃除など
8:30 始業、ミーティング
9時 記録作成やデータ入力など
9:30【家庭訪問①】
10時 自転車で訪問
11時 【家庭訪問②】
11:40 戻つて上司へ報告・相談
12時 昼休み
13時 発達健診準備
13:30~ 15:30
14時 【発達健診】
多職種で関わる
15時 ミーティング・反省会
16時 事業報告の作成
地区担当への申し送り
17時 電話相談・記録
18時 健診結果入力
18:30 退勤

行政保健師の災害時|こおける保健活動

災害は、天災や人災といった不測の時に、多くの人々の生命や健康が著しく脅かされる状況であり、地震や火災などによる一次的な被害だけでなく、二次的な生命・健康への驚異も含まれています。

災害保健活動における役割

災害が起きると、ライフラインや交通機関が止まり、これまでの生活を続けることが困難になります。住まいや衣服、食事、清潔、服薬などあらゆる生活に関する機能が果たせず、人々の生活や健康のレベルが低下します。災害により、家具の転倒などでケガをする場合もあるでしょう。

災害が起こると人々の生活や健康は多様な状況に陥ることが予測され、さらに避難の長期化などで生活再建に時間がかかり、被災してから復旧・復興までのプロセスには長い期間を要します。また、被災するのは、個人だけでなく、地域全体も災害のショックで傷つき、麻痺に陥ります。

交通が上まると地域が分断され、サービスを提供する立場の行政機関も災害のショックで機能麻痺に陥ることが起こり得るのです。「災害保健活動」はこのような被災者に対し、継続して長期的な視点で生活支援を行なっていかなくてはいけません。

行政保健師は、全体を見回して集団生活内での感染症対策を講じたり、 1人ひとりに声をかけて精神疾患や慢性疾患を抱えている人々の対応をしたり、また孤立しないよう心のケアなど予防活動に主眼を置いて活動します。そのような活動がスムーズに行なわれるためにも、ふだんからさまざまな災害に備えた支援体制づくりが重要になります。

災害の種類

災害には、①自然災害、②人為的災害、③特殊災害の3つがあります。

自然災害 地震、台風、津波などを指します。
東日本大震災のほか、阪神・淡路大震災や新潟県中越地震もありました。
人為的災害 大事故(列車、飛行機、自動車など)、崩壊(トンネル、ビル、橋など)、爆発などを指します。
JR福知山線脱線事故や笹子トンネルの天丼板崩落事故などです。
特殊災害 テロや戦争、NBC災害を指します。NBCとはNudear(核物質)、
Biolo9ical(生物剤)、Chemical(化学物質)のことで、サリン事件や和歌山カレー事件、福島原発爆発事故などです。

心理的回復プロセス

*各期の期間は、災害の種類、程度、長さにより、また当然個人により異なります。

英雄期
(災害直後)
自分や家族あるいは近しい人々のいのちや財産を守ろうと、危険を顧みず行動します。逆に、行動しないで引きこもる傾向になり、心のバランスをとろうとする場合もあります。
ハネムーン期
(1週間~6ヶ月)
災害体験を共有し、互いに助け合い、気遣い合うムードに包まれ、被災者同士が連帯感を感じます。
幻減期
(2か月から
1~ 2年)
被災者の忍耐の限界時期。対応の遅れや援助の内容に対する不満が噴出します。人々はやり場のない怒りを感じたり、 トラブルや飲酒問題が起こりやすくなります。また、被災者は自分の生活の再建に個々に追われるため、連帯感や共感は薄れていきます。
再建期
(数年間)
被災者に「日常」が戻りはじめ、もうそつくり元どおりには戻らないことを認めることができ、地域の立て直しに積極的に参加することで、自分に対する自信を増すことができます。しかし、復興から取り残されたり、精神的支えを失つた人との格差がはつきりしてきます。

心の健康

災害後には、心の状態も不安定になります。できるかぎり早期に1人ひとりと関わる必要があります。被災者の心理的プロセスを理解し、復興から取り残される人を少なくするための支援が必要とされます。

災害直後は「救急救命」が優先され、一段落してから「心のケア」が開始されますが、実際には災害直後からサポートが必要です。積極的に話を聞く支援が行なわれます。ストレスを軽減させる方法は誰かに体験を話すことです。被災者自身も聞き手になることで、自分の心が癒されるので、互いに体験を話し合うのも有効だといわれています。

行政保健師が養護教諭となり学校で働く

行政保健師は、「学校保健安全法」という法律のもと、学校における保健教育・保健管理・組織活動を通じて、児童生徒や教職員の健康を保持・増進し、心身ともに健康な国民を育てるという目的を達成するために行なわれる活動ができることです。

養護教諭が中心的存在となり、校長や担任、学校医など多くの人たちと協働しながら進める活動といえます。また、行政保健師から養護教諭になると、成長発達が著しい児童生徒を支援するためには、家庭や地域社会からの影響を受けやすい存在であることもふまえ、地域の保健・医療・福祉との連携が必須です。

養護教諭の仕事内容

養護教諭の職務は、「学校教育法」により「養護をつかさどること」と定められています。

具体的には、日ごろの観察や健康診断などにより「子どもの健康実態の把握に関すること」、「個人や集団に向けた保健指導・保健学習に関すること」、「救急処置および救急体制に関すること」、「健康相談活動に関すること」、水質や照度など「学校環境衛生に関すること」、「学校保健に関する各種計画および組織活動の企画」、「運営に関すること」、「感染症に関すること」、「保健室の設備・物品など運営に関すること」が挙げられます。

また、学校という教育を目的とした場であるため、教育の一端を担う教師という立場にあることが特徴的です。近年は子どもたちの健康課題も多様化かつ複雑化しているため、養護教諭に求められる役割とそれを遂行する能力は拡大しています。

養護教諭を取り巻く人々

養護教諭を取り巻く人々

現代の子どもたちの健康課題と支援

健康診断結果などからは、喘息などのアレルギー性疾患、視力低下、肥満などの増加がみられており、より健康的な生活習慣の確立に向けて健康教育や家庭と連携した保健指導が必要です。

また、疾病や障害を抱えながら社会で生活する子どもに対しては、教育場面で特別な配慮が必要です。

これまでの盲・聾・肢体不自由・情緒障害・知的障害者への特殊教育から、知的な遅れのない注意欠陥多動性障害(注意力が長続きせず、落ち着きなく動き回るなど、不注意、多動性、衝動性などの症状を特徴とする発達障害)、学習障害(話す、聞く、読む、書く、推論する、計算する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す、多様な障害の総称)などの発達障害をも対象としたそれぞれのニーズに応じた特別支援教育もはじまっています。

保健室登校や不登校、いじめ、引きこもり、自殺、リストカット、摂食障害、虐待などのメンタルヘルスに関する問題は社会問題と直結しており、子どもだけではなく、背景にある家庭の問題として学校内外の関係者でチームを組み、支援にあたることも重要です。

養護教諭の1日の仕事の流れ

  1. 朝は保健室の環境整備
    ここでは、養護教諭の1日を紹介します。
    学校の朝は早く、子どもたちはだいたい8時ごろに登校します。養護教諭は、登校中に具合が悪くなったり、部活の朝練などでケガをしたりする子どもたちのために、少し早めに出勤し、まず保健室の環境整備をします。清潔感のあるきれいな保健室を維持することも大切な仕事です。
  2. 打ち合わせと健康状態の把握
    職員室で教職員間の朝の打ち合わせを10分程度行ないます。職員室で必ず行なうことは欠席者の確認です。誰がどのような理由で休んでいるのか、遅刻なのか、同じような病気が流行していないか、長引いていないかなど、学校全体の健康状態の把握をします。
  3. 事務作業や電話相談
    授業がはじまると保健室は静かになるので、集中して事務作業が行なえます。健康診断後や宿泊行事前は、子どもたちの健康情報の整理をして書類作成といった事務作業が特に多くなります。また、保護者からの相談の電話がかかってくることも多く、子どもに関する悩みだけでなく、学校側への思いや要望など、話されることを傾聴します。
  4. 嵐のような休み時間での保健室対応
    休な時間は、子どもたちが押し寄せてきます。絆創膏を貼るだけの子どもでも、本当は昨日自宅であったことを養護教諭に話したかったり、体育に出たくなくて仮病を使ってみたり、用事は十人十色です。特に、昼休みはケガの応急処置に追われる時間ですが、ほかにも食物アレルギーをもつ子どもが昼食でショックを起こしたりと、何が起こるかわかりません。そのため、午後は病院受診へ付き添うことも多くなります。担任や管理職(校長、副校長、教頭)、保護者との連絡がスムーズにいかないこともあるので、特に昼休みから午後は緊張の時間です。
  5. 教員同士の連携、情報共有
    放課後は少し気持ちのゆとりができるので、担任や管理職と気になる子どもたちについての話し合いや情報のやり取りができます。それでも部活動をしている子どもたちもいるので、応急処置などの対応で最終下校までは何かと人の出入りが続きます。
  6. 保健日誌の作成
    l日の締めくくりは、日誌の作成です。その日に保健室を訪れた生徒、休養した生徒、保健室から早退した生徒、それぞれの人数とそのなかでも特に気になった子どもについて保健室日誌に毎日の記録をすることは、あとから振り返りをするうえでも欠かせません。

養護教諭の1日の流れ

時刻 養護教諭の動き
7時 7:30 出勤 保健室の環境整備
8時 8:00 生徒登校、教職員の朝会
8:30~ 1時間目
9時 中休み
出欠の確認、健康確認
10時 体調不良で遅刻した生徒の対応
休み時間は生徒対応に追われる
11時 保護者対応(電話・来校)
4時間目の間に昼食をとる
12時 12:20~ 13:05
昼休み:生徒対応に追われる
13時 13:10~ 5時間目
14時 昼休み中のケガによる受診付き添い
15時 15:00~放課後:随時生徒の対応
16時 宿泊行事前など健康情報の整理、担任や管理職との情報交換、職員会議など
17時 保健室日誌の作成
17:30 生徒最終下校
18時 退勤

まとめ

難病の症状はさまざまで診断がむずかしいため、医療機関の選択に戸惑ったり、地域によっては専門家がいなかったり、診断が確定するまで時間がかかるなどの問題があります。難病患者は、病気のイメージがつかめないこと、確実な治療法がないため将来に対する悲壮感が強くなること、壮年期の発病が多く、経済的に不安定になること、長期療養による家族の介護負担が大きいなど多くの問題を抱えています。

さらに、学童期に発病すると、教育や就労の問題、遺伝による結婚に対する不安などもあり、病気の受入れはむずかしいといえます。

難病対策は、研究によって治療が進んだ疾患もあり、患者および家族の生活の質を大きく向上させました。都道府県ごとに「難病相談・支援センター」を設置し、保健師など専門の相談員が日常生活における相談支援、地域交流活動の促進や就労支援などを行なっています。

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