訪問看護ステーションを取材した看護師5人が見た看護の底力

訪問看護の取材を受けた看護師

実際に訪問看護ステーションを取材した看護師5人の方たちに、取材を通して見えてきた法則について現場ならではの聞き取りを行ってきました。

訪問看護ステーションは、事業展開や内容もさまざまですが、看護師が立ち上げたからこそ「看護の底力」が共通の法則として見いだせました。

訪間看護が目的ではないあくまでもやりたいことを叶える方法の1つ

どのステーシ∃ン(以下、S丁)でも、問題や課題がまず先にあって、その解決策としての訪問看護という位置づけです。

訪問看護をやりたいのではなくて、地域に足りないサービスを作って、地域全体を何とかしたいと思っているのです。地域で大好きな人たちを助けたいと思つたら、それが訪問看護だった、という人が多かったです。

「家に帰りたい」「病気があつても外出したい」という願いを叶えるため、利用者本位でサービス提供を考えておられました。

あるSTは、病院から「人さらい」と言われても「退院したい」と言う利用者を「今日、帰ろう」と連れて帰っていたそうです。

やりたいことをしていたら自然と事業が広がっていた、という感じで、事業拡大は二の次というSTが多かったですね。

制度の枠にとらわれない柔軟さ

どこのS丁も、制度にないサービスでも必要性があるなら、柔軟にチャレンジしてみようという感じでした。

訪問看護だけでは、こぼれ落ちてしまうようなサービスをどんどん作っていて、とてもエネルギッシュです。

制度はあれば使うというスタンスですね。あの人にこういうことやつてあげたいのにできないというジレンマがあって、利用者の希望を叶えるためにどうするかに力を注いでおられました。ですので、訪問看護至上主義ではなく、多事業に展開される柔軟さがあります。

訪問看護や障害者支援の制度だけでなく、NPO法人を別に立ちあげて、制度外だけど、地域で生活する上では欠かせないサービスを提供しているSTもありました。

地域づくりや仲間づくりに力を入れる

ある地方都市の中心部にあるSTでは、あえて支援の手が届かない山間地域で起業した看護師を助けたい、と支援を行っていました。もちろん無償です。熱意のある看護師を支援し、その地域全体の訪問看護を底上げしたいという強い思いを感じました。

訪問看護の仕組み

どこも自分の事業所だけがよければいいという考えはあまりなくて、利用者の抱え込みもありません。間的な余裕はなくても、地区の訪問看護ステーション協議会の会長や全国訪問看護事業協会のブロック理事をされていました。大変なのにがんばる理由は、結局、人との縁は苦労を買ってでも作るものだからとおつしゃるのです。地域をよくしたいという社会貢献の気持ちの現れですね。

全然違う方針のSTをも、支えていこうという懐の深さがあるのよね。スタッフを育ててのれん分けしたことが自慢というS丁も、地域全体の視点をもっていないと、できをいことだなと思います。

築いた信頼をもとに事業を展開

どこのSTも突然、立ち上がったわけではなくて、その前に地域や人間関係といつた根つこづくりをされていました。開設してまだ3年のSTも、開設前から地区の他の事業所で訪問看護をしていて、すでにいろんな人との関係ができていました。その逆でまったく縁がない地域で立ち上げた方もいました。でも、結局、それまでに培つてきた知識やスキル、関係を作ってきた医師との縁がピンチを助けてくれる、ということがお話をうかがつて、よくわかりました。

ある管理者の方は、自分勝手に看護師がしたいことだけを押しつける看護はダメとおつしゃつて志したね。地域から何が必要とされているか多方向から捉えられる、賢くなる看護職になる地域がもっと必要だと話されていたのがとても心に残りました。

立ち上げたのが看護師だからこそ、持っている縁があるなと思います。もともと病棟にいるときから良い看護をしていて、それを知っていた医師や同僚から、あなたなら頼めると依頼が来るのです。ぽんとお金だけ出してS丁を立ち上げても、信頼がなければ依頼も来ないのだなと思いました。

「1ケース断ると20ケースは来ない」と、よく言われますね。たった1件でも断ったら、「あそこはダメよ」となるので、とにかく全部受けることが地域での信頼獲得のためには必要です。

採用のポイントは、円ではなく縁を大事に

採用は人材紹介会社を使わない方がいいと、いろいろなところでアドバイスをいただきました(笑)。それよりはむしろホームベージなどを充実させて、理念に共感してくれる人を採用する仕組みを作つていました。お金で解決せず、採用や教育に時間をかけているのが共通点です。

経験豊富な管理者でも、いい人が採用できないのは、会社自体の方針にブレがあるからだとおつしゃいます。また、管理者が人材紹介会社だけに頼って自分で欲しい人材を探していないと、結局、自分の日で確かめていないせいか、スタッフをあまり信用できなかつたりして、そういうS丁|こはスタッフも定着しにくいようです。

スタッフと利用者を大事にすることが、ひいてはスタッフのやりがいにつながつて、長く勤めるスタッフが増える印象を受けました。縁でつながつて採用した人は良い人が多い、よそからぽんと来た人はなじむのに時間がかかつたり、うまくいかない人もいるとおっしゃるS丁もありました。働くのが楽しいと思えば、また新しい人を連れてきてくれるからと、一つひとつの縁と出会いを大事にされてい訣したね。

募集をいくらかけても、そんなに人は集まりません。人は育つと信頼して、今いる人を大切に育てるという姿勢を感じました。

スタッフを大切にする働きやすい環境づくり

  •  どこもスタッフが大事にされていて、雰囲気がとても良いです。
  •  スタッフが辞めないで済むように勤務形態を変えたり、勤務方法をスタッフも一緒になって考えているところもありました。
  •  どこのSTでも勤務時間に柔軟性を持たせたり、移動の車を貸与したりと、工夫をされていましたね。
  •  経営者が看護職ではないS下で働いてきた人は、業務状況を理解してもらえない不満があったようです。そこで、自分で立ち上げ、看護師の業務に合わせた場所づくりを提供して働きやすさを出していました。

スタッフから見れば、いつでも悩みや疑間を受け止めてくれる管理者がいると、とても安心だと思います。ある管理者の方は、取材中でもひっきりなしにスタッフから電話かかってきていましたし、あるS丁では、実は訪問看護をあまりやりたくないというスタッフの方もなぜか続けていて、その理由は、「管理者がどんなに忙しくても話をしっかり聞いてくれるから」だと言つていました。

教育制度の充実と、自律的に育つような働きかけ

どこのS丁でも外部研修参カロヘの補助窓ども含めて、教育のバックアップをいろいろとされていました。地域の教育ステーシ∃ンになっているS丁では、タブレットの中にいろいろな図版を入れて、自分で学習できるようにしたり、1カ月に何回か勉強会を開いていると言われていました。

教育といっても勉強会を開くだけではなくて、看護師が自主的に考えられるように、ひたすらケースの振り返りに付き合ったり、自分の頭で考えられる看護師を育てようとされているSTも多かったです。

新卒を採用して教育し始めているところも出てきています

皆さん、教育には時間も手間もすごくかかるという覚悟を持つています。利用者のこともあきらめないけど、スタッフのこともあきらめない人たちが管理者をんだなと思います。

私自身も大切にしてもらつた管理者の顔が、今でも困ったことに遭遇すると思い浮かびます。

スタッフの自主性を重んじてフラットなチーム運営や、どういう視点が訪問看護では大切なのかを「見える化」されているS丁もありました。初めて訪問看護を始める人には、とても入りやすいと思いました。

業務の効率化を図る

看護師が看護に集中できるようにと、事務専任の方を置いているところもありました。看護の質を落とさないためにも、看護業務に集中する時間を作るという意味で、記録などをIC丁(情報通信技術)化しているところが多かったですね。

あるS丁は、新卒看護師でも制度を理解できるように、新規利用者との契約から研修プログラムを組んでいます。あとは、S丁同士での会議にTV会議システムを取り入れたりしていました。、

学歴の高い優秀なクラークがいて、契約業務も含めて請求の事務が別にいるSTもありましたし、事務を雇うには人件費がかかるので、経営戦略との相談ですね。

看護の思いと経営とのバランスを取る

月に―度コンサルタントが入り、売上数字をスタッフ全員で共有し、経営に参加させているS丁もありました。管理者がうるさく言ってやらせるのはだめで、事業を継ぐ後進を育てるためにも、S丁に何が必要なのか、経営的な視点をみんなに持ってほしいとおっしゃっていました。

経営が成り立たなかったら事業はやっていけないのですから、経営力は基本です。

必要な看護を提供すると赤字になることもありますが、多事業でカバーし合う事業展開をされているところも多かったです。管理者はもともと経営が本職ではないので、借入金などの負債を、あまり抱えこまない工夫をされていました。だからと言って儲からないから「30分訪問」はしないのではなく、むしろ必要なら無償でも提供しましょう、というのが基本姿勢です。

訪問看護があるおかげで経営が安定して、やりたいことができているところも多かったです。たとえば、ホームホスピスのあるSTは、住居として賃貸契約を結ぶので敷居が高く、経営が安定しにくい面もあります。そこを、訪問看護の報酬で埋めるといった具合です。

ホームホスピス®の理念に共感し、自分たちの地域でもホームホスピス®を実践したいと志す方が増えてきました。私たちは、高齢多死時代と言われる中で単に死を看取ることではなく、いのちを慈しみ支え合う地域を作りたいと取り組んできた活動が、より良いかたちでそれぞれの地域で広がっていくように、ケアと運営の基準を制定しました。
出典:全国ホームホスピス協会

訪問看護だけでは、利用者が入院すると急に収入が減るなど、 リスクがありますね。経営を継続するには、いいことばかりではないという管理者もいました。必要に駆られてさまざまな事業を立ち上げた分、人事管理や金銭的なトラブルも多くあったそうです。

あるS丁では、思いがあるだけでは経営は安定しないから、看護の質と制度と全体のバランスをうまく取るそうです。これはやるからここは妥協してねと、というバランスです。経営がうまくいかむいS丁は、看護の思いが強すぎるところもあると言っていました。

確実な技術と知識プロとして学び続ける姿勢

何より確実な看護を提供するため、十分なテクニックと知識があります。さりげないのですが、生半可な知識ではよい看護は提供できないと感じました。

問題解決のために、あるいは利用者の自己実現のために看護師として学び続け、悩み続けている。それは、看護職(起業)としたS下の醍醐味であり魅力かなと思います。

管理者である前に看護師としての信頼が必須です。

まとめ

どこのS丁も、立ち上げられた方が今でも強烈なリーダーシップを取っておられるのが印象的でした。オーナーでもあり、リーダーでもある。

管理者にはブレない看護観や、人としての芯があります。芯の強さが魅力になり、そこに吸い寄せられるように人が集まるのかなと、実際に自分がお会いしてみて感じたことです。

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