看護師が転職で成功するための5つのキャリアパス

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狂乱のバブル景気が終わりを告げ、終身雇用や年功序列といった古くからの日本型経営が崩壊してから、企業に勤務する人たちのキャリアデザインは大きく変わりましたが、看護の世界も例外ではなく、かつてのように一つの病院に長く勤める看護職は少なくなりました。

看護師の転職はキャリアアップしない

大学はもちろん、中学高校でもキャリア教育が行われるようになり、若い世代の意識自体が大きく変化しているのも要因のひとつでしょう。しかし、一般の企業が転職によってキャリアアップしていくのに比べると、看護師の転職は必ずしもキャリアアップにつながらないケースが多くあります。これは、中途採用看護師などへ対する評価が、一般企業のようにシステム化されていないことの現れでもあります。

看護師が一般の会社員のように、転職によってキャリアアップするためにはどうすればよいのか?同じ施設での勤続年数と転職のタイミングは?などなど、看護職に就いているひとならば一度は思い悩むことがあるのではないでしょうか。

変わりゆくキャリアデザインの意味

キャリアデザイン、キャリア形成と呼ばれる概念は、一言でいえば「職業能力の習得、向上」ということになりますが、かつての日本では役所や大企業に就職できれば、あとはその組織の中でのキャリアアップを意味し、いわゆる「出世コース」をどう歩むか、ということでした。

しかし、社会に出るに際して「役人になれば、あるいは一流企業に入れば一生安泰」といった前提はバブルとともにもろくも崩壊し、どのような職場にあっても、それは「安全・安心」を保証するものではない、という現実が私たちの目の前に突き付けられたのです。

本当の勝負は社会に出てから

ニートやフリーターが増え、ワーキングプアが高学歴者にまで及ぶ現在の日本では、かつて一生の安泰を保証してくれた「学歴」「肩書」「資格」などの神通力が通用するのは、スタートするまでのほんのわずかな時間のみとなりました。今の日本では、生き残りを賭けた本当の勝負は社会に出てから始まるのです。

「キャリア」という言葉についても、かつては出世やエリートコースを意味していましたが、今は個人の「自己実現」を目標としています。ひとつの組織の中での出世と違い、自己実現には明確なゴールがなく、自分はどのような人生を歩みたいのか、自分はどのような仕事がしたいのか、自分を生かす道とはどのようなものか、を問うこと、自分を深く見つめなおすことが出発点となります。

景気の後退に伴うニートやフリーターの増加による若年層の労働力不足は、少子高齢化の日本にあっては国力の低下に直結します。政府は若者に対して「仕事や働くということ」が、自分にとってどのような意味を持つのか、といった職業観、労働観をはぐくみ経済的にも精神的にも自立することのできる能力を身につけさせるため、学校教育におけるキャリア教育に注力しています。

学歴に基づくエリートコースはもう存在しない

超高齢社会を迎えた日本では、社会に出る前の若年層のうちにキャリア教育が始まり、社会に出てからのキャリアアップ、さらには退職後の「生涯学習」に至るまで、年齢や職業を問わずさまざまなキャリアデザインが推進されています。

裏を返せば、学歴に基づくエリートコースはもう存在しない、「親方日の丸」はもう通用しない、終身雇用も年功序列も崩壊、年金だけでは生活できない老後が待ち構えていますよ、ということを国が宣言しているようなものです。しかし、いくら不満を述べていても私たちの生活はよくなりませんし、収入が増えることもないでしょう。ならば今からでも遅くはありません。自分にとって無理のないキャリア形成に取り組んでみましょう。

看護師にとってのキャリアデザインとは

看護師にとってのキャリアデザインキャリアデザインに対する考え方も、根本的には他の職業となんら変わるところはありません。自分の人生における仕事や働くことの意義をどう捉え、仕事と、趣味や家事とのバランスをどう配分するか、といった事を踏まえたうえで、看護師としてどのような道を目指すのかを考えます。

看護師は古い体質を持つ職場

ただし、看護師におけるキャリアデザインが他の職業と決定的に違う点は、働く場所が会社ではなく病院である、ということでしょう。普通の企業であれば、所属する課は違ってもみな同じサラリーマンであり、その階層は社長を頂点にピラミッド型を形成しており、全体が階級こそ違えど所属部署間に大きな差はありません。

しかし、会社と違い病院では、圧倒的な権限を持つ医師のみが頂点に立ち、その下に看護職をはじめとするコメディカルが横並びにいる、という構図です。しかも、歴史的に医師は男性、看護師は女性がほとんどで、古い階級制度に男尊女卑の考え方が併合された、非常に古い体質を持つ職場といえるでしょう。

こうした古い体質、組織観から脱しきれない医師や病院の経営層にとって、師長など管理職以外の看護師はすべて同じ、スキルや経験値が評価されにくい状況にあります。事実、日本看護協会の調査によれば、看護師の賃金について一定の期間で再評価をしているか、という病院への質問に対して74.8%が「再評価はしていない」と回答しています。一方で、年功給による昇給を導入している病院は77.8%を占めており、看護師の給与は新人から長く勤める生え抜きのほうが、転職するよりも生涯賃金が高くなる傾向にあります。

評価システムの導入が乏しい看護師

一方、一般の企業では社員個々の能力による評価システムの導入が盛んで、能力の高いビジネスパースンはヘッドハンティングなど転職によるキャリアアップが当たり前になっています。この評価システムの違いが、看護師の転職によるキャリアアップを阻む大きな要因となっています。

看護職の賃金、処遇

出典:日本看護協会 ニュースリリース

しかし、年功給によって昇給はするものの、新人の頃からの上昇率は最大で145%と、一般企業の昇給率よりも低く見受けられます。ただ、看護師の給与額はスタート時点から他の職業よりも高く、平均年収として見劣りするものではないと思えます。ですが、看護師の収入のうち、20代では30%が、40代でも25%は夜勤などの時間外手当です。

しかも、表面に現れない引継ぎ業務などのサービス残業が当たり前に行われ、人命を預かる精神的なストレスから健康を害する看護師は後を絶たず、これが離職離職の原因となり現場に復帰しない潜在看護職を生む要因ともなっています。看護業務の現実を考えるとき、この賃金が本当に高いといえるのか、はなはだ疑問です。

年齢別の看護師の給与総月額と基本給月額

看護師の給料のグラフ

給料の詳細

非管理職・中間管理職の年収差

非管理職・中間管理職の年収差

また、師長や主任などの管理職も一般の中間管理職に比べると給与水準は低く、看護師は全体的にみると給与水準において一般企業を下回るのが現実のようです。それでは、看護職がキャリアアップを果たし、給与水準を引き上げるためには一体どうすればいいのでしょうか。

文部科学省が定義するキャリア教育とは「社会的・職業的自立に向け、必要な知識、技能、態度をはぐくむ教育」であり、職業教育とは「一定の又は特定の職業に従事するために必要な知識、技能、態度をはぐくむ教育」であるとしています。つまり、キャリア教育とは、ある職業においてプロフェッショナルとなるための基礎的な知識や技能に加えて、専門家としての心構えや倫理観、職業観を養う学生に対するものであり、職業教育は社会に出てから仕事を通じて育まれるスキルや技術の向上と、プロ意識を持った職業人の育成ということになります。

看護師におけるキャリアパスにはモデルとなるいくつものストーリーがありますが、代表的な例として次の5つを挙げておきます。転職すべきかせざるべきか、いつ転職すべきか、自分の目指すキャリアはどこなのか、を考える参考にしてください。また自身のキャリアアップのための転職先の探し方等は、看護師転職は法律に基づいた看護協会運営のeナースで探そうの詳細をお読みお役に立てください。

中間管理職を目指す

一般看護職から主任、看護師長、看護部長などを目指す場合は、一般企業にも通じる組織の中で昇進の階段を上るキャリアパスです。この場合、ある程度のタイトルを得るまで転職は不利になります。また、病院における管理職のポストは一般企業よりも少ないので、管理職を目指すのであれば相応の努力が必要です。

管理職を目指す上で結婚や出産、育児などのライフイベントは仕事にブランクをつくることになり、昇進・昇格への影響は否めません。この点も一般企業の総合職と同様、女性看護職にとっては険しい道と言わざるを得ないでしょう。

認定看護師を目指す

看護業務の中でも高い専門性とスキルが求められる分野で、看護師に人気のキャリアパスのひとつです。認定看護師は、

実践:看護技術の熟練を前提とした高い水準の看護を患者だけでなく、家族や集団に対しても実践する。

指導:看護の実践を通して看護職に対して指導を行う。

相談:看護職に対するコンサルテーションを行う。

という役割を担っています。

現在、認定看護分野は、救急看護、皮膚・排泄ケア、糖尿病看護、緩和ケア、透析看護、認知症看護、訪問看護など21種類あり、認定看護師になるには、これらの分野における看護経験を3年以上、これらを含む看護職としての実務経験5年以上が条件となっています。

この条件を満たしたうえで日本看護協会が認定した教育機関で6カ月・600時間以上の教育課程を修了し、筆記試験に合格することで認定看護師として登録されます。受講する教育機関には入学試験がありますので、受験対策のための勉強から始めると認定看護師を目指してから登録されるまで、最短で2年ほどかかることになります。

ただし、せっかく認定看護師となっても給与水準はあまり変化がないという職場は少なくありません。前述の通り、多くの病院は一般企業の社員と違い、個人の能力評価の概念がないために、認定看護師となっても給与が上がらない、手当も数千円からせいぜい1~2万円といったところが多いようです。しかし、いざ転職となると話は別で、多くの求人医療施設は転職時にその看護職の経験や能力評価をしますので、認定看護師としての職歴が高く評価されるポイントになりえます。

ただし、認定看護師の受験資格を得るまでに5年、認定看護師として登録されるまでに2年、転職を目指すのであれば、さらに認定看護師としての経験も何年か積んでおかなければならず、このキャリアパスでは新人のころから、10年後の転職という長期的な展望が必要です。新人のころから認定看護師を目指していれば、受験の準備や願書提出のタイミングも最短で済み、もっと早いキャリアアップが望めるはずです。

キャリア・コンサルタントへの華麗なる転身

看護師として始めて入職するとお世話になるプリセプターの先輩看護師たち。看護師といえどいろいろな人がいますから、良いプリセプターから反面教師までさまざまです。でも、中には人に教えるのが好きで、教え方のとてもうまい人も少数ですがお目にかかることがあります。教え上手な人は概ね面倒見がよく、後輩の相談にもよく乗ってくれます。このタイプの人に向いているのがキャリア・コンサルタントへの転身でしょう。

看護師のリクルート会社でキャリア・コンサルタント、キャリア・アドバイザー

このようなタイプの人は長く勤めれば看護部で主任クラスに抜擢されることも多いと思いますが、いっそ病院などの医療機関から飛び出して、看護師のリクルート会社でキャリア・コンサルタント、キャリア・アドバイザーとして活躍してみてはいかがでしょうか。

長く人材不足の続く看護業界では、潜在看護師の復職や現状に不満を持つ現役ナースにより転職市場が活況を呈しています。この傾向は少なくとも2025年までは続くとみられますので、各リクルート会社も転職予備軍の登録に躍起です。

多くの場合、キャリア・コンサルタントは医療機関での勤務経験がなく、看護師の勤務状況についても深いところまではよくわかっていないのが実態です。ただ、最近では少しずつですがキャリア・コンサルタントに看護経験のある人材が増えてきつつあり、転職希望者から重宝されています。

元ナースならではの経験が転職志望者にとっては心強く、信頼関係を築きやすいからですが、そんなキャリア・アドバイザーの中には、看護師から看護教員となり、さらにキャリア・コンサルタントへと転身、ついには自ら看護師のためのコンサルNPOを立ち上げてしまった元ナースもいるほどで、これも看護師の新しいキャリアパスのひとつになりつつあるといっていいでしょう。

キャリア・コンサルタントを目指すのであれば、看護職として3年目くらいを目安にするといいでしょう。なぜなら、看護師としてのキャリアから医療系キャリア・コンサルとしてのキャリアに乗り換えるには、看護師として1人前と認められた早い段階で路線変更し、キャリア・コンサルとしての資格取得を目指すのがベストだからです。看護職として3~5年目くらいの転職を目指しましょう。

看護職キャリアサポート
出典:NPO法人 看護職キャリアサポート

保健師や管理栄養士などの資格を取る

看護師の中には看護学校卒業時に保険師の資格も取得した人が多いと思われます。保険師の仕事の魅力は、看護師と違って病者のケアではなく健康増進が主な役割であり、病棟のような夜勤、残業がない点にあります。夜勤がないぶん給料は看護師よりも安くなりがちでしたが、実はここ2年ほどで状況が一変しつつあるのです。

それは2014年に労働安全衛生法が改正され、50人以上の事業場では産業医や保険師によるストレスチェックが義務付けられたからで、特に従業員1000人以上の企業では高給優遇されるケースが多くみられるようになりました。かつては自治体の健康センターが主だった保険師の活躍の場は、今大きく広がりつつあります。

保険師の資格が必要

最近の保険師の平均年収は看護師とほぼ同等といわれ、夜勤なしで平均年収は500万円以上とされています。そんな保険師への転職は、自治体に勤務するのであれば看護師のほかに保険師の資格が必要ですが、民間企業であれば看護師の資格だけで勤務OKの会社が少なくありません。さらに、保険師への転職は看護師経験の長さを問いませんから、いつでも転職のチャンスはあるといえます。

また、現在のチーム医療で欠かせない存在となっている管理栄養士ですが、以前は栄養士となって実務経験を積まないと管理栄養士の受験資格が得られませんでした。しかし、現在は4年制の管理栄養士養成校が増え、栄養士としての実務経験がなくても取得できるようになっています。管理栄養士を目指すのであれば、やはり看護職として1人前となる3年目くらいに一度看護師の仕事を辞めて、管理栄養士の資格を取得後に看護師に復帰する、という流れが自然でしょう。

ちなみに養成校卒業者の国家試験の合格率は90%を超えるといいますから、時間とお金はかかりますが、比較的とりやすい資格といえるのではないでしょうか。

特定看護師、いずれはNP(ナースプラクティショナー)?

近年の医師不足をカバーするためにチーム医療が推進され、コメディカルによる役割分担や、医療行為の範囲拡大が推進されています。そんな中、看護職の権限を拡大し、より広範な領域で医療行為を可能にするため、特定行為研修を修了した看護師に対する裁量拡大を厚生労働省、日本看護協会が推進しています。

研修を終了して特定看護師になる

この研修を修了した看護師は一般に「特定看護師」と呼ばれていますが、今のところ資格ではなく単なる研修修了者として扱われます。具体的には医師による手順書に基づく気管チューブやドレーン、カテーテルの扱いや薬剤投与量の調整などが可能となります。

この特定看護師、いずれはアメリカのNP(ナースプラクティショナー)のように資格制度化されると見込まれていますが、アメリカにおけるNPは、診断、処方、投薬などが可能で、過疎地や医師不足の集落などで総合診療の窓口的な役割を果たす、医師に準ずる医療資格です。

日本版NPについては、日本医師会などが反対を表明しており、一部の現役看護師からも反対の声が上がっており賛否は分かれています。また、この制度化については、実際にはこれまでも一部の人手不足の医療現場で同様のことが暗黙の内に行われており、ならばいっそ制度化してしまえ、といった短絡的な考え方もあるといわれています。

今のところ、特定行為研修の修了が看護職の収入アップに直結するものではなく、転職に際しても格別有利になるわけではないようです。しかし、いずれはNP制度が導入される、とする見方も根強く、研修を修了しておくのは悪いことではないかもしれません。

まとめ

看護師が自らキャリアデザインを描き、ゴールに向けてまい進するのは時間や仕事、職場環境などの制約上むずかしい面が多くあります。看護師となって直面する組織の階層における人間関係やリアリティショック、社会人として、また看護師として、初めての経験に対する処し方などを身につけるまでは転職を控えるべきで、少なくとも最初に転職を考えるのは3年目以降とするのがよいでしょう。

看護師の転職にふさわしい時期というのは人それぞれですが、やはり結婚や出産、育児と言ったライフイベントによって利殖を余儀なくされるケースは多いものです。ですから、ライフイベントの時期と離職期間をあらかじめ想定したうえで、看護師はキャリアプランを考えるのがベターです。

何によらず遅すぎるということはありません。逆に思い立ったが吉日とも言いますから、キャリアプランに迷ったら、まずはナースセンターやリクルート会社に相談してみてはいかがでしょうか。

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