中途採用看護師が苛烈な職場で不安と焦りを解決する5つの対策

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中途採用看護師は、入職と同時に新しい環境で働くことになり、これまで簡単にできていた業務であっても、今までのようにスムーズにはできなくなります。物品の場所がわからない、ちょっとした手順が違っている、誰にどのような経路で確認すればうまくいくかが判断できない、など多くの中途採用看護師は「うまくできないこと」による挫折感を経験します。

1.理想と現実のギャップによるショックを緩和する

看護の複雑な実践を円滑に進めていくには、そこでの環境に適応し、多くの情報を理解して対応することが欠かせないからです。中途採用看護師は、職場が変わるという時点で、以前と同じように仕事をこなせるわけがないと覚悟している人が大半です。

期待に対応できない環境

しかし、頭ではわかっていても、できない。動けないという事実は、予想以上に自信を失う体験になるのです。人は、周囲からの要請や期待に自分の能力で応えることが難しい状況におかれたとき、 自尊心が傷つくのを避けようといろいろな反応をします。

これまで看護師としての経験や知識・技術にある程度の自信があったのに、うまくできない場合はそのショックはとても大きいわけです。

たとえば「慣れていないのでできません」と大袈裟に主張する人や、「そのやり方はおかしい」とあらゆる説明に反発する人、「なんでもやります」と落ち着きなく動き回る人など、表面上は複雑でばらばらの反応にみえますが、その裏側に、新しい環境のなかで自尊心が脅かされるような状況をなんとか乗り越えようと必死に模索している姿があるのです。

受け入れ側が、このような中途採用看護師の基本的状況をしっかりと理解することが必要です。そのような状況だからこそ、受け入れ側がスポンサーシップを基本として、新しい仲間の個性を認め、それがいかせるようなかかわり方をどうやればいいのか、お互いに探していく積極的な行動が効果を発揮するのです。

ときとして、職場環境が苛烈なために看護師の過労死という事態にも発展しかねない

看護師が長時間過密労働が原因で死に至ること。労働災害認定を受ける事例が出るなどして、1980年代後半に世間の関心を集め、過労死という言葉が一般化しました。

1989年に英国の一般誌で、日本特異の現象であるとして「Krousi」という表記で紹介され、現在は英語をはじめとした他言語の辞書にも掲載されています(そもそも「過労」も、日本における社会医学的概念である)。

2.苛烈な職場での看護師の過労死対策

先進国の中では珍しく経験がある看護師の過労死が多い理由として、勤労を美徳とする日本人の国民性や、その関係で労働基準法が遵守されてない点を指摘する声もある。日本経済が不況の時代に入ってからも過労死は後を絶たない。

最近では、過労自殺など業務時間外の死亡でも労災認定される例が出ている。「月の時間外勤務100時間以上、または月80時間以上が2か月以上継続」が通常の判断基準で、過労死の労災認定請求のうち、認定されるのは5割弱である。

2008年の10月に、看護師の高橋愛依さん(死亡当時24歳)と村上優子さん(死亡当時25歳)の過労死が認定された。村上さんの事例について大阪高裁は、時間外勤務月50.6時間(認定された時間)と通常より短い時間外勤務でも、勤務間隔が5時間以下となり十分に休息できないなど不規則な交代制勤務の特殊性を重く見て過労死認定をした。

それを受けて日本看護協会が「時間外勤務、夜勤・交代制勤務等緊急実態調査」を実施したところ、交代制勤務で働いている23人に1人、推計で全国の約2万人の看護師が、過労死危険レベルの勤務(交代制勤務をし、かつ時間外勤務時間60時間以上)をしているという驚愕の結果が出るとともに、20代が疲れていること、中間管理者も疲れ、看護管理者の悩みが深いこと等が明らかとなった。

看護職全体が疲弊しているのだ。日看協では、「ナースのかえる。プロジェクト」の推進をはじめとして各種取り組みを開始し、「夜勤・交代勤務に関するガイドライン」の策定を進めている。国は、医療の全体量を減らすなどの取り組みをしている。

では明日、2万人のうち1人たりとも新人看護師を過労死に至らせないために看護職はどうすればいいのか。

疲弊した状態では、どんなに優秀で能力のある人でもの力を発揮できず、頑張る、我慢する「ぎりぎり」の加減さえわからなくなってしまう可能性もあるのだから、疲弊していない人たち、つまり看護職以外の人たちに積極的に助けを求めることも賢明な判断といえるだろう。たとえば、過労死110番に即座に相談するなどがあります。

20 代の職員は時間外勤務が長く、非常に「疲れた」状態です。20 代には、新人から職場の中堅までいろいろな人がいますが、過酷な勤務から看護の現場を去り、2 度と戻らない人も少なくありません。今の20 代が職場を去ることなく働き続けられるよう、今すぐ手を打つことが必要です。日本看護協会日本看護協会

中途採用看護師の過労死と過労自殺

過労とは、その診断指標にあるように

  1. 休息を取った翌日にも疲労感が残る
  2. 作業能力が顕著に低下する、といった身体的かつ目に見える変化のほか
  3. イライラ感や現実感の喪失といった精神症状を伴う。

このことからも、過労死と過労自殺は切り離して考えることはできない。

いずれも大きな社会問題であり労働問題となっている。厚生労働省の定義では「過労死とは過度な労働負担が誘因となって、高血圧や動脈硬化などの基礎疾患が悪化し、脳血管疾患や虚血性心疾患、急性心不全などを発症し、永久的労働不能または死に至った状態」とある。

交代制勤務者の時間外勤務時間数の分布

交代制勤務者の時間外勤務時間数の分布

年齢階層別の疲労自覚症状回答項目数

年齢階層別の疲労自覚症状回答項目数出典:日本看護協会日本看護協会

慢性疲労兆候を示す疲労自覚症状として以下の7 項目を質問したところ、20代が7項目中5項目で他の世代よりも回答率が高く、さらに4項目以上回答した者が37.3%と、他の世代より多くなっていました。

3.中途採用看護師の不安と焦りを支えなければならない

中途採用看護師は、本人の知識や技術レベルだけでなく、 どのようなキャリアを志向しているのかで、 日ざすものが大きく異なります。専門性や成果への強いこだわりをもって、キャリアアップのために新しい職場を選択した人は、新しい環境で自己学習を積み重ねる行動を自然に行うでしょう。

しかし、環境に合わない中途看護師は、プライベートと職場の両立ができなくなり、次第にマイナス思考になっていきます。

中途採用看護師の価値観の違いを認める

しかし、このような行動も1つの個性の現れです。当然、すべての中途採用看護師がそうとはかぎりません。仕事よりもプライベートが大切という人もいます。その価値観の違いによって、中途採用看護師の不安や焦りは多様なのです。

このようなさまざまな価値観の中途採用看護師に対して、その人の資質を全面的に支援するスポンサーシップは、そこまでやる必要があるのか、 という疑間を感じさせるかもしれません。

しかし、 日標を「看護師として“一人前”になること」と、ある程度―律に設定できる新卒看護師と、中途採用看護師の目ざすゴールは同じではないはずです。

したがって、中途採用看護師1人ひとりの能力を引き出し活用するためには、相手の個性を十分にふまえ、その人の資質を信じて支援するという姿勢を、厳しい現場でも忍耐強く貫くことが欠かせないのです。

4.中途採用看護師の能力を正確に見極める

中途採用看護師は新卒看護師と違つて、教育背景や看護実践能力がばらばらです。新卒看護師とまったく同じ指導というのもできませんし、かといつて、確かな技術や知識をもつている人ばかりでもないので、現場での指導はとくに難しいと感じます。

教育担当者の指導と能力次第でスキルアップにつながる

中途採用看護師の現場での指導は、新卒看護師を対象とした教育計画のような準備や積み重ねがないため、多くの場合、そのときに教育担当になった人の裁量で指導内容が決まってしまうというのが現状です。

これでは教育担当者がどう指導すればいいのか常に悩まされるのは当然かもしれません。この「どう指導するか」に効果的な答えを見つけるには、相手が「どんな人なのか、 どんな個性をもっているのか」をしっかりと把握し見極めることが必要です。

中途採用看護師に対するかかわりのポイントとして、相手のよいところを見つけそれを伝える、つまリポジティブフィードバックや承認の重要性が強調されます。

すると、「間違いを指摘してはいけないのか」、「だったらどうやって足りない知識を得てもらうのか」という疑間を抱く人も少なくないと思います。もちろん、知識や技術についてどこまで理解しているのか、どれだけ実践できるのかは、また中途採用看護師の能力を過剰に期待することは避けなければなりません。

ですから、「できること」と「できないこと」をお互いに明らかにして、より効果的な指導に活用するというのは、決して間違ってはいません。しかし、特定の技術や問題解決が「できる」、「できない」という単純な分類だけでは、中途採用看護師の力を正確に理解することにはなりません。

同僚や患者に対する看護師のコミュニケーション能力や、自分自身を知ってマネジメントする力といった、ビジネススキルを含む総合的な力量を正確に評価することが必要です。

ところが、技術項目のチェックリストやクリニカルラダーなどを活用する際に、ただ漫然と使用してしまうと、できていない。不十分というマイナス面に指導する側の意識が集中してしまうことがあります。したがって、その使い方には十分な注意が必要です。

チェックリストにある項目を中途採用看護師に経験させる

けれど、その頃にはいつも中途採用看護師は辞めてしまう」これでは何のために指導をしているのかわかりません。能力を見極めることの本当の意味、それは受け入れ側が、中途採用看護師の可能性をどれだけたくさん見いだせるかということにつきます。

相手のすばらしいと思える点を見つけることができれば、受け入れ側の態度は変わり、結果的にそれは相手の態度にも影響を与えて、お互いのかかわり方がよりよいものに変化するのです。

すなわち、できない点を探してそれを修正することだけに注意を注ぐのではなく、逆の発想から中途採用看護師の力をとらえることで、柔軟に個人の個性を把握することが可能になります。

これは枠組みをいったん外して物事をとらえる「リフレーミング」と呼ばれる発想法の1つで、多様な能力や価値観をもつ対象の個性をいかした指導をするためには、 とても大切な姿勢なのです。

5.環境変化による中途採用看護師実践力の低下を考慮対応する

十分な臨床経験があり能力も高いのに、仕事に対する姿勢がいつまでも消極的な中途採用看護師がいて、戸惑っています。自分の意見を譲らない人も困りますが、自分から挑戦していく積極性がないというのは、こちらのやる気がなくなってしまいます。

実際の看護現場でうまく仕事を進めていくために、私たちは看護の知識や技術だけでなく、その現場の暗黙のルールや決まりごとなどを適切に活用しています。この明文化されていない雰囲気は、短期間につかむことは難しく、 したがって、新しい環境に不慣れな状況では、 どんな看護師も自分の実力を十分発揮することはできません。

管理職のような複雑な調整が必要な仕事の場合には

異なる環境で以前と同じレベルの成果をあげるようになるには、1年半程度の時間が必要だとする経営領域の研究報告もあります。多くの場合、受け入れ側の看護師たちは、中途採用看護師の名前を覚え、お互いにいろいろな会話を気楽にできるようになると、「ずいぶんと慣れてきた」という判断をしがちです。

しかし、実際の看護現場では、患者の状態のアセスメントだけでなく、医師や同僚看護師、それぞれの関係性や環境要因など、きわめて複雑な状況の理解と判断が必要になってきますから、職場でのコミュニケーションと業務における職場適応は同じではないことを理解しておくことが必要です。

数週間ですっかり職場に慣れてきたようにみえても、実際にはさまざまな不安や焦りを中途採用看護師が抱えているということも少なくありませ
ん。まず、受け入れ側が「慣れて当然」、「できるのが普通」という姿勢になっていないかを、謙虚に反省することも大切です。

また、組織の文化に関する情報については、中途採用看護師の個性にあわせてていねいな情報提供をすることが重要です。たとえば「誰に聞けばいいのか」、「どのような慣習があるのか」などの情報です。

情報提供の際には、それに従うべきという姿勢でなく、施設や部署の特性を理解してもらうことによって、中途採用看護師が少しでも楽に環境に適応し、その個性を発揮できるようになってはしいとしっかりと表現することが必要です。

まとめ

不慣れなために一時的に実践能力が下がったようにみえても、あなたにはすばらしい能力があるという上司からの肯定的なメッセージは、困難な状況にある中途採用看護師を支える力になるでしょう。

看護管理者や教育担当者から、これらの予備情報の提供や、状況に対する深い洞察を示すことは、プライドが高く「できない」ことによって自尊感情が低下しやすい中途採用看護師や、他人からの励ましや慰めよりも、自分で何とか乗り越えたいという向上心の高いタイプの人には、 とくに有効なサポートになるはずです。

絶対に自分から身を引く事態だけは避けなければなりません。そのためには「追い込む」のではなく「認める」ことから開始しなければ、苛烈な職場での仕事をこなすことはできません。

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